愛についての多義的視点
「僕のたどり着いた答えは "君" だった。」
一瞬何を言われているのか分からなかった。
自分でも眉間にしわが寄せてしまったのを感じた。
人の心より広いものが、彼にとっては私だと言う。
彼は何を伝えたいのだろうか。
答えを求めるように小首を傾げた。彼は慌てて答える。
「広いっていうのはその、
物理的なことだけを言うんじゃないと思うんだ。
確かに空は広い。物理的にね。けど僕が思うに、その、君は…」
一気にそこまで言ってしまってから彼は口ごもって、言い淀む。
言葉を選んでいるような、言うのをためらっているようにも見える。
「君は、多義的な存在っていうことなんだ。」
多義的。一つのものが他の複数の意味を持つ事。辞書はそう言う。
私が多義的な存在?私は彼にとってなんの意味もない人間だ。
何か意味を持つほど、彼と特別な時間は過ごしていない。
ただ無為に、無垢に、幼いまま時を生きただけだ。
「僕の中で君は、たくさんの意味を持つってことだよ。
その、つまり、古い友人としての意味合いもあって、
1人の女性としての意味合いもあって…っていう事なんだけど…。
詩人さんの前でそれっぽい事を言うのは御法度だったかな…?」
探るような視線を向けられて、私は頭を小突かれたような小さな衝撃を受けた。
彼の中で私がそれほどの意味を確立していることが不思議だった。
まだ百歩譲って旧友だと言うのならばわかる。
私だって彼のことは友人だと思っている。しかし。しかしだ。
彼は私を1人の女性としての意味合いも持っていると言った。
その言葉が何を意味するか。
ずいぶん粋な答えだと半ば混乱もせずただ衝撃を受けただけの頭の隅で考えていた。
身体ごと、エドワードに向き直って言う。
「…ずいぶんと、その、小洒落た告白ね?」
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