平々凡々たる詩人的見解
海よりも空よりも広いもの。それは何か。
かつて、子供遊びの議論を重ねたあの風景を思い出す。
そこにいるのはかつての幼い私達ではない。しかし答えもわからない。
詩人的直観というものがあるなら、
多くの平凡な詩人は「愛」と答えるだろうというところまではわかった。
そしてこの私も、平凡な詩人であることは疑いようもない。
「愛、とか言ってみちゃったりね。」
結局どこまでいっても才能のない詩人は、ただ冷静と自嘲を含んでそう答えるのだった。
「愛」を語るには足りないものが私には多すぎるのに。
「奇遇だね。僕も同じような答えにたどり着いたんだ。」
彼は人懐っこい笑顔でそう言った。
なぜだろうか。私が「愛」と答えるのと彼がそう答えるのとは、
すこし意味合いが違うように思える。
彼が言うと、それはそれは綺麗なものに思える。
「愛」を語るような曲を彼はたくさん知っていたりするのだろうか。
彼はそれを誰かに。弾いたり。
なぜか考え込んでしまって、彼の笑顔が遠いものに感じてしまう。
もともと近くなんてなかったのかもしれない。目をそらしてしまう。
「僕の答えは聞きたくなかったかな。」
目をそらした私を自分の答えに興味がないと解釈したのか、
横目でちらりと確認したとき、彼は困った顔で耳の後ろの方をかきながら言ったのだった。
「…別にそういうわけじゃないわ。
ただ私のはありがちな答えだと思っただけよ。」
なるべく静かに、冷静に答えた。
目をゆっくりと彼に戻して言う。
「で、あなたの答えはなんなの?」
私と似たような答えにたどり着いた、と彼は言った。
「愛」に似た答え。人の心より広いもの。
それはなんなのか、単純に少し興味があった。
「えっ?あぁ、えっと。」
自分の答えに興味がなさそうだった相手が、
打って変わって興味ありげな態度を示したものだから、
彼は戸惑ってしまったようだ。
しかしすぐに居住まいを正してきっちりと立ち上がり、
わざとらしい小さな咳払いをひとつした後、彼は真剣にこう言った
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