兵どもが夢の跡
広いとは言えないが、庭を持っている。そこにはセンスの欠片もなく、雑多に植物を植えてあり、しかも圧倒的に手入れ不足だ。
庭を計画したときは、一応の想定はあったのだ。バラをメインに低木を入れて、ナチュラルにこぼれ種で増えて行く草花を咲かせて、なんてね。ターシャの庭なんて無茶なのは知っていても、イメージだけでも近づけたかった。己を知らぬとは、怖ろしいことである。私は頗る付きの億劫がりだ。
植物を育てるのは好きだし、知識先行の頭でっかちなので、そこそこ順調に伸びるし、増える。花が咲けば嬉しいので、ちゃんと施肥もする。問題は、ここから。
そう、植物ってのは伸びるし増えるんである。美しく保つには、刈り込んだり誘因したり間引いたり、そういう手間が不可欠なのだ。そして植物が育つのに適した環境があるのなら、観賞用よりもしぶとく丈夫で成長の早いものが、はびこって来るのだ。
おい、そこのエノコログサ、あんたは私の計画には入ってない。ヤブカラシ、誰の許可を受けて地下茎を庭に張り巡らせた! 何故ここにサンキライが出てるかって、もしや去年のクリスマスリースから実が落ちた?
ガーデニングっていうのは、日々の作業がモノをいう。気になったときこまめに雑草を引いたり花がらを摘んだり、ひとつひとつはそんなに手間のかかる作業じゃないので、つい翌日にまとめてって考えがちだ。そして翌日が億劫だったら週末へ、いやいや今週は出掛ける予定が……みたいな。
結果、成長の早い樹木に絡みつく蔓性植物と雑草の、原生化したジャングルが出来上がる。片手間の手入れじゃもう、絶対に間に合わない。日を設けて庭仕事をしなくては、ご近所様からクレームが来る勢い。
埋まってしまったクリスマスローズやラベンダーに、陽を当ててやらなくてはならない。ってか、蔓バラの枝を始末しないとアーチが通れません!
かくして虫よけパーカーと皮手袋装備、腰に手ノコを下げ、ギア付き剪定鋏を構えて長靴を履く日が訪れる。
夏草の勢いはまだ、衰えない。
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