2話 退職

前回の件をきっかけに僕は遂に、


退職を決意した。


そして、僕は流れるように退職願の作成に取り掛かった。

退職願は、特に決まったフォーマットない事を知ったので、

インターネットで参考にしつつ、退職願を書き上げた。


次の日

朝、退職願を上司に渡す為に、朝早く出社した。

話しかける時の決まり文句は

「すいません。今、お時間よろしいでしょうか?ご相談したい事があるのですが」

これだけだ。これで、別室に呼び、上司に退職の話をした。

上司は、一度困惑しているように見えた。

そして、普段では考えられないような優しい言葉を投げかけ始めた。

何も考えない状態なら、すぐに退職を思い直すだろう。

しかし、普段の上司の様子から気にかけている様子はなかったので、これは嘘だなと考えた。きっと、自分の評価に関わるからだろう。


その後、すぐに上司の更に上の人間が出てきた。

その人は、

「辞める前に、なんで辞めるのか聞いてみようと思って、今度から参考にするから。」

「思い直せ。今のお前が辞めた所で、どこも引き取ってくれる所はないぞ。」

「今のお前なんか、○○だ。」

「現実見ろよww」

口々に好き勝手な事を言い始めた。


これを聞いて瞬間、自分の中の一本の張りつめた糸が


プッツン


と音をたてたような気がした。


そして僕は、まるでダムが決壊し、水が一気に溢れ出てくるように

これまでの事を全て言い放った。

入った当初から、嫌な雰囲気を感じていた事。

そして、これまで見てきた物を全て言った。


そしてそれを聞いた上司の反応は、、、、、


「君の言うとおりだ、、、、。」

そして上司は、その後

「数年前から、同じことを俺も感じ取っている。だから、君にその雰囲気をどうにかしてほしい。」と一言僕に言った。


そうか、この上司は、そんな雰囲気をそれまで感じていたが、改善する事が出来なかったのか。数年がかりで出来なかった事を、俺にどうにかしてもらおうと考えているのか。人をあてにし過ぎている。

そもそも、入社して数か月の人に、ここまで言われて、「その通りだ」と言う反応

もどうかしている。


このままじゃ、自分の大切な時間を、無駄に使ってしまう。

そう考えた。


だから僕は、何がなんでも退職すると言い続けた。

これを聞いた上司は、何度も説得しようとしたが、遂には折れたのか

退職が受理された。


退職が決まったら、すぐに手続きが始まった。

返却する物の説明。定期券の解約。

色々な連絡は遅かったのに、退職の手続きはやけに早いな。

そう僕は皮肉を感じながら、会社を去った。



会社を去った後。

僕のお腹の不調も直ぐに治った。

そして、知り合いが言うには、以前より顔つきが明るくなったと言う。

この時の僕は、何が嫌だったのか明確じゃなかったが、何かを嫌がっていたのだろう。何が嫌だったのか?

職業が合わなかった? 人間関係? それとも、、、?

しかし嫌な理由はどうであれ辞めてしまった事実は変わらない。

この職歴は、一生背負う事になるだろう。

けど、不思議となんとかなると思っていた。


そうして僕は、退職して一週間。

ずっと自分を責め続けた。

あの時、あーすればよかったんじゃないか。

あの時、あの先輩に、ハッキリ嫌だと言えばよかったんだ。

そもそも、会社を選びを間違えたんじゃないか?俺の感覚どうなってんだ。

ただ一つ言えるのは、辞めてしまった良かったと言う事だ。

辞めた瞬間に、会社に関わらなくて済む事への安心感。

余計なストレスのはけ口にされる必要がなくなった事へ安心感。


そうした安心感を感じつつ、そろそろ、新たな就職先を探さないとマズいと思った。危機感が生まれるくらい、余裕が生まれたのだ。


そして僕は、転職活動を開始した。


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