1話 入社

桜が舞う中で、僕は心が踊っている。

ようやく、社会人になるんだと。

社会人になれば、多くの事を選択して決めていく事が出来る。

その期待感で胸がいっぱいだった。


今は、大学の卒業式。

入学式以来に聞く校歌を聞きながら、昔の事を振り返っている。

きっと僕のように、各々、自分のこれまでの思い出を振り返っているのだろう。

校歌の後は、学長の話が始まり、その後成績優秀者の表彰。

「あいつ、成績良かったんだな。。。」

そんな言葉が周りから漏れている

努力している人は、何も言わないのだろう。


さて、卒業式が終わり、僕はさっさと帰宅した。飲み会とかに誘われたけど、

今は気分じゃなかったので、先に帰る事にした。


卒業式の次の日。

僕は、社会人生活に備えて、新しいスーツを購入し、バックも買った。

社会人として、頑張っていこうと決心した。総額、5万円だ。

学生の財布には、少し痛手だったが、気分を変える為に購入した。


そういえば入社前に、雇用契約書とか色々用意しなければならいんだっけ?

さて雇用契約書を書こうとなった時、一個だけ気になる項目があった。

給与のところだ。

文面には「給与明細参照の事」

僕は、あれ?と疑問に思った。何か給与について隠しているように見えるな。


その時、気づくべきだったかもしれない。

都合の悪い所を隠そうとする姿勢を持つ会社であった事に。

けど、僕は「頑張るって決めたんだ。やってやるよ!」と思っていたので、

特に気にもとめなかった。


入社日。

この日は、研修だ。

同期とも初の顔合わせ。

長い一日が終わり、次の日は、営業所に初の出社となった。

けど、その日から、この会社おかしいと思ったんだ。


1人1人の人間が、かなり悲観的な人達だった。

「なんで、こんな会社入ったの?wwww」と上司から言われ、自己肯定感が低い会社であった事が理解できた。

暗い職場でもあり、常に誰かを傷つけていないとやってられないらしい。

当然、そんな先輩達の姿を見てると、自分が情けなくなってくる。

自分が選んだ会社なのに、、、、、、と失望感が心を満たした。


毎日、誰かの愚痴を聞き続け、どんな事に対しても皮肉めいた事を言ってくる。遂には、何のいやがらせか、仕事を貰えなくなり、要求されるのは、ご機嫌取り。

何の為に出社してるのか分からなかった。

ストレスだった。仕事を覚えるどころではなかった。

でも、耐えなければ。そう思って、暫く頑張っていた。


だがある時、こんな事があった。


仕事でミスをしたのだ。

当然、先輩から怒られると思ったのが、先輩の反応は違った。

いきなり、大笑いしたのだ。

「他人の失敗は、見てて面白いwww。」と言いながら、慌てた僕の様子を真似して、大笑いしていたのだった。


その瞬間、僕は、職場の人間性に染まってしまう自分を想像してみた。

ダメだ。自分の価値を落とす事にしかならない。


退職と言う二文字が頭を過った初めての瞬間だった。



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