暑い日に考えること

海星

第1話 ゴキブリについて

ゴキブリのことについて考えている。


当然、とても嫌いなのだけれど、どうも他の人よりも遭遇する機会が多い気がする。

引き寄せの法則という話があるけれど、もしかしたら嫌いすぎてよく考えているせいで、人よりも多く遭遇してしまうのかもしれない。


昨日も5センチくらいの長さのゴキブリが私の部屋の中にいた。しかも部屋の角からビュンととびでてきて、ぴた、と私のベッド横のスタッコ塗りの壁にはりついた。白い壁に、てらてらの虫。しかもベッド横。


当然、ぎゃー!とスクリームをあげ、家人を全員起こし、退治を依頼し、父親がしぶしぶティッシュでつまみとろうとした瞬間、また飛び逃げるG。さらにスクリーム。「こやつ!」と昭和な掛け声で追い詰める父。そして窓まで追い詰め、窓の外へ追い出した。


こうやってよくゴキブリに遭遇する話を人にすると、いや、それはあなたのお家が汚いせいでしょうと言われるのだが、うちの家はいわゆるおしゃれハウスで、私も綺麗好きなのでゴキブリが住んでいるはずはないのだ。父も、久しぶりにゴキブリを見た、隣の家から飛んできたんじゃないかしらというけれど、なぜよりによって私の部屋なのか、なんで他の部屋じゃないんだと腑に落ちない。


未だに思い出すのは、10年ほど前、実家の管理するアパートを掃除していたときに、200匹以上のゴキブリをゴミ箱の中に入れたことだ。なんでそんなことになったかといえば、実家の隣に父が家賃収入を目的として立てた、ほったて小屋のような4戸しか入っていない木造アパートがあって、その住人が退去したあとの掃除が私と弟の役割だったからだ。その部屋はインド人が住んでいて、弟との掃除中に小さなゴキブリが1匹いたため、一応、と思ってバルサンをたいた。一応じゃ済まされなかった。バルサン終了後の部屋には、一面のゴキブリ畑が広がっていた。大小さまざま、いろんな色、いろんな形。


当然、ぎゃー!と叫んで、弟を呼んだが、弟は、こわい、僕無理、おねえちゃん掃除して、、、と言って逃げた。逃げたんだあいつは。。。父にいたっては、まあそれも掃除のうちだよね、と鬼のような発言。そうして無限とも思われるゴキブリの山を処理することになったのだ、嫁入り前の娘が。


こうやっていつまでもその事を考えているから、引き寄せの法則を発動してしまうのかもしれないけれど、ゴキブリのあの形とあのサイズとあの動きは、人の脳裏にこれ以上ないほど焼きついてしまう効果があるような気がする。果たして、卵が先か、鶏が先か。きっとこうしてゴキブリはみんなの脳裏から飛び出てきて、また思考に戻っていく、空想上の生き物なのかもしれない。


当然、そんなはずはないのだが。だってゴキブリって恐竜時代から地球にいたのだから。人間の思考が地球に生まれる前からいたんだから。

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暑い日に考えること 海星 @Umihoshi

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