第35話 後編2~綱取~

綱取が始まった。

皆が一気に敵陣地に行くと思いきやなかなか両方ともに動かない。

「なんで、両方とも動かないいんですか?」

「それも、策略の一つではあるからね」

それも、策略の一つね。

「でも、それじゃあ勝負決まりませんよ」

「まあ、このままならね」

「じゃあ、もう少しすればなにか、起こるってことですか?」

「そうかも、しれないし、そうじゃないかもしれない。見ていればわかるよ」

「まあ、そうですよね」

そのあと一気に変わった。守っていたのに、今度は、全員で攻め始めた。

「ええ!そんなのありか⁉」

「ありですね。だって、言わばこれこそが、この競技『綱取』における本当の闘い方だからね」

「そうですか」

これが本当の綱取なのか。今までずっと守ってきていたのに、あんな、一気に攻め始めて……そういうことか。つまり、あの守っていた時間は、言わば体力温存的な感じだろう。何故ならこの競技時間は、15分となっている。もし、全員が厳つい男だったら、体力温存なんてものはやらず、直ぐに相手の綱を取りにいっただろう。でも、全員が厳つい男ではなく、むしろその逆の女の子たちばかりだから。

「──最大限に力が出せる時間の限界が8分ぐらいということですね」

「まあ、そんな感じですね」

でも、そうなるとおかしいところがある。

なんで、他の厳つい男たちも、女の子たちと同様に体力温存なんてことしていたんだ?だって、そんなことをしたら、時間の無駄になってしまう。

眩は、俺がなにを考えているにがわかったのか

「おもしろくするため」

そう言った。ただ単純に一人よがりなことをして仕舞わず、全員で相手を倒しにいくそんな感じだということなのだと思う。

「はは、この学校の綱取っておかしいですね」

「そこが面白くもあり、この学校のいいところであると思うかな」

「そうですね」

どこか、今日の眩がは空元気な気がしてならなかった。

勝負は、引き分けに終わった。

 

 

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