第34話 後編1

「ではでは、最初の競技は、準備体操ぉぉぉ!」

放送部の新倉あらくらさんが、ものすごい勢いで体育祭の最初の競技準備体操の始まりを告げた。

「準備体操が、終わったあとは、綱取だぁぁぁぁぁああ!!!」

これもまた、もの凄く勢いだった。

「では、会場のいるみなさんに、我が校の綱取のルール説明をしたいと思います。仁方にいがたさん宜しくお願いします」

「はい。我が校の綱取は、普通の綱取とは、一味も二味も違います。我が校の綱取では、通常はセンターラインに綱は置いてあり、そこからどちらがより多く取れたかだと思いますが、我が校では、自分陣地に綱を置き、そこからどちらがより多くの綱を取れたかというものです」

俺は、思うのだった。

──相手の陣地から綱を取り合うって危険じゃね

と。まあ、その辺が楽しいんだろうけど。

ちなみに一年生には、全ての競技ルールは、説明されていない。それに、体育の時間にも練習していない。

先輩とかから聞いて知っている奴とかいそうだけど、それが意外にもいないのだ。なんたって、ルールを教えてしまったら、対策とられて負けるかもだからな。

そして、俺は召集係なわけだから、召集場所にいるのだが………

──なんで、こんないかにも私運動できませんとか言いそうな子達ばっかなの?

いや、まあちらほらと厳つい男もいるにはいるけど、でもその数が極端に少ないのだ。比率にするならば、9対1ぐらい。そんなぐらいに男の数が少なかった。

「ねえ、昌幸君。なんで、こんなに女の子たちが多いと思う?」

「えーと 、なんとなくですかね」

「実はね」

眩は、俺の耳の近くに自分の顔を持ってきて小さい声で

「───────」

「え?それって本当ですか?」

「本当」

「まじですか」

まじか、この綱取が男女比が9対1になるようになっていたなんて。

確かによくよく思い出して見れば、朝会場へ行く間の時に周りの一年生が、綱取ってまだ誰が出るかしらないんだよねーとか言ってた気がする。

そうこうしている内に、入場の時間になった。

「では、一列に並んで進んで行ってください」

その言葉を皮切りにぞろぞろと入場していった。

全員が入場し終えただとうところで、この綱取のルール説明をしてくれた仁方さんではなく が、新倉さんが

「でわぁぁああ、準備はいいですか 。よーいスタァァアァートー!!」

と最初の準備体操の時よりも声がどことなく大きく聞こえた。

そして、綱取は始まった。

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