第2話
私はきっとどこにでもいる小学生だ。あることを除けば。
ジりリリリリリリリリリ。
私の朝はいつもこの甲高い機械音で始まる。
母親を起こさないようにすぐにアラームを止める。
そして、行きたくもない学校の支度を静かに始める。
あぁ、こういう時の気持ちを一言で表すなら、憂鬱だろう。
転校してきたばかりで前の学校とは違って私服ではなく制服なので着慣れない。
それとは反対に慣れてきた赤いランドセルを背負い台所に置かれた菓子パンを一つだけ取り、家のカギをポケットから取り出し掛ける。
私は田舎から転校してきたため都会のこの雰囲気にはまだ慣れそうにない。
少し離れたところにある工場から匂うガスのような匂いに、遠慮なく通る車の排気ガスのにおい。どうしてこんなところに来てしまったのだろうか。
この後悔が私の小さな背中にのしかかる。
家に帰れば男の人とお母さんのいつもよりワントーン高い声で楽しそうに笑いあう話声。そこに私の姿はいない。
学校に行けば知らない都会の子の五月蠅い声。
新しいおもちゃを見つけたみたいに私の周りを大勢で囲む。
そこに私の意思はない。
人見知りであがり症の私にとってそこは耐え難い空間だ。
そしてつまらない授業を終えて人込みから抜けて校門にいる先生と挨拶かわす日常。
そこで私は帰りたくないという気持ちに押しつぶされるのだ。
遠回りをして歌を歌いながら帰る。
あぁ、ついてしまった。
今日もこの空間に私の小さな「ただいま」が響く。
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