第11話 ヒーローは遅れてやってくる

そっか、俺、刺されたんだ。

ということは今までのは走馬灯?


走馬灯か、思い出したのほとんど恭子のことだったなあ。笑っちゃうな、どんだけ好きなんだよ、あいつのこと。


楽しかったなあ、恭子に会って、いろんなとこ行って。


ああ、俺死ぬのか……


やだな。

もっと恭子といろんなとこ行きたい。

もっと恭子と一緒にいたい。


駄目だ、こんなところで、死ぬわけには——


いかない。



目を開くと、とても不安そうな顔をした恭子がいた。


恭子は俺に気づくと、泣きそうな顔をして、それがなんだかとても愛しくて、目に入る恭子のすべてが大好きで、愛おしくて、なんだか無性に抱きしめたかった。


だから口からは自然と言葉が漏れていた。


「結婚しよう」


すると恭子は、初めて告白したときみたいに目を丸くして、口をポカンと開けていた。


そうしてまたあのときのように、大きく笑って……


「いいよ。……やっぱりあんた面白い」

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