第8話 殺せ。

古びれたアパートのインターホンを鳴らすと、中から金髪の男が出てきた。


「あ? だれ?」

男は俺も顔を見ると、銀歯を光らせながら目を細めた。


「神崎 恭子の彼氏です」

男の顔が歪んだのがハッキリと見えた。


次の瞬間、頬に衝撃が走った。

俺は中に浮かびながら状況を飲み込む。


ああ、俺は殴られたんだ。

あんまり経験のないことに、少し脳が追いつかない。


「どこだよぉ、恭子は、どこだ! だせよ!だせ!」

男の目は異常に血走っていた。

だめだ、やばい。


脳は危険信号を発しつづてけていた。

このままだと……殺される。


それでも、俺は引くわけにはいかない。

恭子のために、絶対に……


俺は慌てて鞄をまさぐった。

アレを使うしかない。

できれば、使いたくなかったが……

もう仕方がない、俺が守るんだ。


鞄の中でこぶしを握り締めた。



ついた! ついたぞ。

やっとだ…… やっと会える。

やっと、俺が彼女を守れるんだ。


俺は強くドアノブを握った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る