第7話 走れ!

恭子がそいつと出会ったのは高校生のころだった。

受験も終わってもうすぐ卒業というときに、最後だからと告白をされたそうだ。

そうして恭子もそれを受け入れた。


だけどそいつがおかしいと気づくのに、そう時間はかからなかった。


最初は些細なことだったらしい。

男友達といるとちょっと嫌な顔をしたり、少し嫉妬深いだけだと思っていた。

でもそれは次第に強くなって、少しラインの返信が遅くなるだけで、そいつは電話までかけてきたり、男友達のアドレスを全部消させたりと、だんだんそいつの束縛はエスカレートしていった。

恭子がいつも何をしてるか把握して、恭子のスケジュールを全部管理しようとして……


恭子は流石におかしいと思って、大学に入って会えなくなったの口実に別れた。

もちろんそいつはなかなか別れようとしなかったから、半ば強引に。


これでやっと終わったと、そう思った。

けれどその安心は長くは続かなかった。


恭子について聞きまわっている人がいる、と友達に言われた。


それから朝起きたらラインの通知が溢れていたり、友達越しに手紙が届けられたり、校門の前で待ち伏せしているそいつを見かけた時には、心臓が止まるかと思ったそうだ。


そしてついに俺が見てしまった手紙が送られてきた。手紙を何通も送っても無視をする恭子に、とうとう愛情が憎しみへと変わったらしい。


守らなきゃ。

そう思った。

たとえ何をしてでも。


絶対に恭子を守る。


「ちょっと待ってて」


恭子にそう言い残すと、ある決意をして俺は家を飛び出した。



走れ、走れ、走れ!

もうあと数十メートル。

彼女の家は目と鼻の先だ。

走れ、走れ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る