第4話 開いた口が塞がった

「ごめんね、連れ出して。なんか、疲れちゃってさ……」


「大丈夫。俺も、同じだから」

なんて平静を装ったけど、内心俺の緊張は半端なかった。

正直、映画を撮ってる時より緊張したな。


それからいくつか言葉を交わしたんだけど、頭の中はフル回転だった。


この言葉でいいんだろうか。間違ってないか。

恭子の気を引けてる? 本当に大丈夫?

俺の頭の中では円卓会議が開かれていたよ。


そうして会話がだんだん詰まってきて、次は何を話せばいいか、全然わからなかった。

ああ、どうしよう。

そんな風に思って、俺の頭の中の円卓の騎士たちは何をトチ狂ったんだろうな、とんでもない結論を導き出した。


「俺と……付き合ってください」


恭子はポカンと口を開けていた。

よっぽど驚いたんだろうな。

俺も驚いた。自分でも何言ってるんだかわからなかった。


もう完全に終わったと、そう諦めかけた時、大きな笑い声が聞こえた。


「いいよ。君、面白い」

笑い声の主は、綺麗な笑顔でそう言っていた。


今度は俺が口を開ける番だった。

そうしてその開いた口は恭子によって塞がれた。


俺たちは二回目のキスをした。



あれからサクール内は、二人が付き合ってるって話題で持ちきりだったな。

しばらく事あるごとにその話を持ち出されてたよ。

ホント、いい加減にして欲しいよな。


それにしてもハロウィンだからだろうか?

仮装してるやつがちらほらいる。

まったく楽しそうなことだ。


教えてあげようかな、この中に本物の殺人鬼がいるってさ。


まあでも、今日は俺が一等賞でしょ。

なんせ人を殺してまでの、仮装だからね。


だけど、日本人はいつからこんなイベント好きになったんだろうな。……昔からか。


イベントといえば俺たちもサークルでいろんなとこに行ったな。

青木がそういうの大好きだからさ。


そうだ、あのとき海に行こうって言い出したのも青木だったな。

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