第4話 開いた口が塞がった
「ごめんね、連れ出して。なんか、疲れちゃってさ……」
「大丈夫。俺も、同じだから」
なんて平静を装ったけど、内心俺の緊張は半端なかった。
正直、映画を撮ってる時より緊張したな。
それからいくつか言葉を交わしたんだけど、頭の中はフル回転だった。
この言葉でいいんだろうか。間違ってないか。
恭子の気を引けてる? 本当に大丈夫?
俺の頭の中では円卓会議が開かれていたよ。
そうして会話がだんだん詰まってきて、次は何を話せばいいか、全然わからなかった。
ああ、どうしよう。
そんな風に思って、俺の頭の中の円卓の騎士たちは何をトチ狂ったんだろうな、とんでもない結論を導き出した。
「俺と……付き合ってください」
恭子はポカンと口を開けていた。
よっぽど驚いたんだろうな。
俺も驚いた。自分でも何言ってるんだかわからなかった。
もう完全に終わったと、そう諦めかけた時、大きな笑い声が聞こえた。
「いいよ。君、面白い」
笑い声の主は、綺麗な笑顔でそう言っていた。
今度は俺が口を開ける番だった。
そうしてその開いた口は恭子によって塞がれた。
俺たちは二回目のキスをした。
*
あれからサクール内は、二人が付き合ってるって話題で持ちきりだったな。
しばらく事あるごとにその話を持ち出されてたよ。
ホント、いい加減にして欲しいよな。
それにしてもハロウィンだからだろうか?
仮装してるやつがちらほらいる。
まったく楽しそうなことだ。
教えてあげようかな、この中に本物の殺人鬼がいるってさ。
まあでも、今日は俺が一等賞でしょ。
なんせ人を殺してまでの、仮装だからね。
だけど、日本人はいつからこんなイベント好きになったんだろうな。……昔からか。
イベントといえば俺たちもサークルでいろんなとこに行ったな。
青木がそういうの大好きだからさ。
そうだ、あのとき海に行こうって言い出したのも青木だったな。
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