第3話 ステュクス、或いはコキュートス。
撮影後の打ち上げでは、先ほどのキスシーンのことを散々囃し立てられた。
「いやー、熱かったねー、キスシーン。なあ? 相川」
始まりは青木のこの言葉だった。
青木は俺たち一年生のリーダー格で、今回の映画ではメガホンを取っている。
「でも本当にいいシーンだったよ、神崎さんも
橘くんもさ……」
話を振られた相川は戸惑いながらも、そうフォローした。
相川はカメラマンとして俺たちの作品を撮ってくれている。
あまり主張をしないタイプだから、何を考えてるかよくわからないけど、カメラマンとしての腕は確かだ。
青木の声をきっかけにして、打ち上げの席は俺たちのキスシーンの話題で持ちきりになってしまった。
「ちょっと、いこ?」
いつまでも止まらない声に辟易とした頃だ、恭子にそう声をかけられた。
「え?」と戸惑う俺を恭子は無理やり外に引っ張っていった。
「え、なになに? 二人でどっか行くの?」
最後に聞こえたのは青木のこの言葉だった。
*
そうそう、この川だったよな。
彼女が引っ張ってきたのは。
あの時の俺の気持ちは動揺なんてもんじゃすまなかったな。
本当にハラハラさせてくれるよ、彼女は。
だけど、なぜだかこの時の彼女はいままでで一番綺麗だったんだよな。
だから、俺はこの時決めたんだ。
絶対に彼女を守るって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます