女子高校生というもの
蒔田舞莉
女子高生
昼休み。
いつもの五人で机をくっつけて、弁当を広げる。
毎日のことながら面倒くさい。勿論口に出したりしないけど。
昼食くらい一人で食べたいというのが本音だ。四六時中他人と一緒にいるのはしんどいから。
私みたいな人間が割といるんじゃないかと思う。誰も声に出さないだけで。
言ってしまえばハブられるかもしれない、それは避けたいのだ。
ハブられるというのは端的に一人になることを意味する。そして、一人というのは絶好のいじめの対象だ。
いじめられるなんてごめんだ。平和に、平凡に。普通の人生を歩みたい。
正面に座っている
お前の恋愛遍歴なんぞには毛ほどの興味もねぇよ、と心中で毒づきながら。
「ねー、そういえばあんたたちは好きな人とかいないの?」
亜友里の目は、明らかに私たちを見下していた。
"いたところで無理だろうけど"とでもいいたげな。
まあいいんだけどね、別に。そういう性格のせいで他のクラスメイトの女子から嫌われてんのも理解できない、可哀想な奴だと思えば大して腹も立たない。
隣で明らかに不機嫌そうな顔をしている
優耶はわからない程度に肩を竦めた。
その間に、
「うちはいないかな」
「あたし中学校の時のクラスメイト。前も言ったと思うけど」
「へー、そうなんだー。告んないの?」
「無理無理。相手彼女いるし」
いやいや男っていうのはさぁ。
経験の多い女のようにアドバイスもどきをしている。
それは要するに自分がどれだけモテるか自慢であり、どうでもいい話ベスト3に入る。
一頻り武勇伝を語り終わると、ちら、と視線がこっちに向く。なるべくしゃべりたくなかったのだがそういうわけにもいかない。仕方なく口を開いた。
「居るけど告る気はないかな」
「えー、織花可愛いんだからもったいないよー」
「いやいや」
「てか誰?うちのクラス?」
「さー……どうだろうねぇ」
食べ終わった弁当を包んで弁当袋に入れる。
優耶も食べ終わったらしく弁当袋と水筒を机に掛けたカバンに突っ込むとと立ち上がった。
「トイレ行ってくるわ」
「うぃー。いってらー」
私は頭痛薬やらサプリメントやらを取り出しつつ手を上げる。
ガラリとドアの動く音が二回したあと、亜友里がまた口を開く。ただし今度は小さな声で。
「優耶さ、態度悪くない?最近めっちゃ睨まれるんだけど」
安心しろ、お前が気付いてないだけで私も碧も知波も影で睨んでるから。
勿論口にはしないけど。
そうかなあ、とか適当な当たり障りのない答えを返し、自分を棚に上げた悪口は優耶が帰ってくるまで続いた。
女子高生、というのは世間でいわれるほどキラキラしていないし、馬鹿でもない。
少なくとも私はそう感じている。
女子高生というのは、ドロドロしていて、ずる賢くて、狡猾で、全然綺麗じゃない。
気付かれないようにサボるのはお手の物。咎められない程度のいじめなんて日常茶飯事。
強かに、強かに。狼の群れに放り込まれた羊なんかにならないように。羊にならず、狼であるために。
大人に用意された箱庭の中で、互いを牽制し合って、疑いあって、時には自分が虐げられないように他を蹴落としたりして。
大人とも、子供ともいってもらえない中途半端な私たちは、自分が傷つかないように、自分を失わないために。
私たちは必死にもがいているのだ。
女子高校生というもの 蒔田舞莉 @mairi03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます