第9話 最終話


「ごめん。もうだませない。死んだんだよ、あいつは。」

「ぬるま湯から突き出すような言い方ね。でも、貴方らしいわ。」

いや、他に言い方も考えたさ。でも、やっぱ言葉を飾るのは得意じゃないから。」


そう端的に言われた昨日の夜。だから、ここで行留守番してる意味も無い。お兄ちゃんは帰ってこないんだから。だったら、なんでここにいるんだろう。私はただ待ってた。帰ってくると信じて。だから存在すら知らなかったこの店を守った。お兄ちゃんが帰ってくるときに目印になるように。あれが、あれが最後の約束人なるなんて思いもしかなかった。


「なぁ、香奈恵。言うつもりは無かったんだよ、、、知ってたから。お前がすごく質の存在に救われて、縋ってたのを。俺もそうだし、俺だって、信じてないさ。あいつが死んだなんて。でも、目の前で見ちまったんだ。冷たくなっていくあいつの体。息なんてしてないんじゃないかって疑いたくなるほどか細くて、頼りなくって、それでも必死に俺に言ってきたのを。香奈恵を頼む。香奈恵には内緒にしててくれ。って。」

「別に責めてなんかいないよ。ここを守るって決めたのは私だし。」

「でも、もういいんだ。もういいんだよ。ここにいなくったて。あいつは帰ってこない。もう時間を過ぎてる。もういいんだ。だから、恋でもして普通に戻って良いんだよ。」

「それも良いかもしれない。でも、ここにはいろんなお客さんが来ている。彼らは私の力を求めている。でも、でも、私はどうしたいのかわからない。お兄ちゃんのためだったはずのここが私の大切になってる。でも、でも、ようやく昔から欲しかった普通が手に入る。ねぇ、私はどうすればいいの?」

「悩め。俺はそれ以外に言えない。あいつもお前が好きな方を選んだ方がうれしいに決まってる。」

「う、うん。」





ここは、逢いたいと思ってたあの人に逢える場所。2代しか続かなかったけど、

ここは大切になっている。だから、また開くかもしれない。それまでのさようなら。

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香奈恵堂にお任せを サクニジ @sakusaku0510

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