第6話 わかるんじゃない、気づいてしまう

すごく時間が過ぎた。外が暗くなって、それでも帰ろうとしない湊に気づいた。夜が鍵なんだなって。でも、まだその準備はできていない。


「暗くなっちゃったね。。。」

「うん、そうだね。帰りたい?」

「う、うん。暗いとこあんま好きじゃない。」

「そっか、じゃあ、帰ろっか。」


その一声が合図だったかのように、星が瞬く。いつも以上に奇麗に瞬く。いや、そんな気がするだけか。。だって、空自体は変わってないんだし。でも、魔法だと思う事にする。いつも以上に奇麗な星が見えた魔法の夜ってことに。


「星、奇麗だね。お月様も奇麗だね。」

「そうだね、涼介も、この風景が好きだったんだよ。」

「そうなんだ。。」


教えないで、知りたくない。今はいい。ヒントもいい。気づいてないふりをさせて。



「いや、そう言う意味じゃないよ。昔一緒に来たときはそうだったって話。」

「わかってるよ。お兄ちゃんからこないだ電話かかってきたし。」

「そっか。良かったじゃん。」

「うん。よかったよ、、一応生きてるってことだしね。」

「そうだね。」


違うって言いたい。それは涼介じゃなくて俺だって。涼介は、、涼介は、、いや、今はいい。たぶん、気づいてる。でも、今はまだいい。それはいやな想像のままでいい。

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