第9話双子

「うっ...くそっ!なんだよ女のくせに!...覚えとけよ!!」

 たった1人倒されただけで、もう一人の男はビビり、よくある捨て台詞を言ってその場を立ち去った。


 男に拘束されていた二人は事が解決して安心したのかその場に座り込んだ。


「あ、あの...大丈夫でしたか?怪我とかした...?」


 置いていたカメラを取り、爛は二人の元へ向かった。


「いえ、貴方のおかげで怪我もしていません。ありがとうございます。」


「お姉さん、ありがとう。でも、よくあんな男投げられたね...ラミスには出来ないや...。」


 クスッと笑いラミスは爛の事を見た。

(わっ...オッドアイだ。赤と紫の...綺麗。)

 目が合った瞬間、爛はラミスの目から目が離せなかった。


「綺麗な目だね。もしかして、カラコンだったりするの?」


「ううん。これは元々。ちなみに、ラルスは逆で右目が紫で左が青色なんだよ!」


 そう言うと、ラミスは座っているラルスの腕を掴み強引に立たせた。


 案の定、ラルスは体制を崩しラミスと頭をゴツンとぶつける。


「ったぁ〜、ラミス人に手を出す時はなにか一言言ってくれないと怪我するかもしれないだろ。」


「ごっめーん、男のくせにずっと座ってるものだからつい。」


 ウインクしながら舌を出し「テヘッ。」と言う彼を見てラルスはため息一つ。


「...にしても、二人共顔そっくりだね!もしかして双子?」


 爛は買い物した事を忘れ、生まれて初めて見るオッドアイの双子に興味津々だ。


「せっいかーい!大正解!そう、ラミスとラルスは双子だよ!ラミスが女の子でラルスが男の子!」


「え!ラルス君男の子だったの!?てっきり女の子だと思ってた...ごめんね。」


「いえいえ、よく勘違いされるので慣れてますよ。でも、確かに僕も男ですけどラミスも.....グハッ。」


「え!?大丈夫?ラルスくん。」


「まったくー話すの大好きなんだからラルスはー。ついつい手が滑って腹殴っちゃったじゃんー。」


 ペラペラと話すラルスの腹に肘を思いっきり当て、口だけ笑っているその笑顔でラルスを睨む。


「いや、もはや手が滑ってじゃないよね。しかも肘だし、何より意図的な...。」


 文句を言うラルス、それに対してワントーン低いドスの効いた声でラミスは

「その先言うなよ、分かってるよな。」

 と、爛には聞こえない大きさで言った。


 そして、コロッと表情と声を変えてラミスは爛の事をみた。


「そういえば、お姉さんってなんて名前なの?」


「あ、そういえば言ってなかったよ

 ね。私は神城 爛(カミシロ ラン)。高校2年生だよ!」


「...爛...?」


 ラミスは顔を顰めた。

 確か、メアちゃんを迎えに行った時そこに居た女の子は麗爛...。


 いや、でも名前が少し似ているだけで守護者(ガーディアン)と決めつけるのは良くないし、わざわざ敵を助けるわけもないか...。


「ラミスちゃん、どうしたの?」


 心配そうに見つめる爛を見て、ラミスは敵なわけないかと思い「何でもないよ。」と笑って返した。


「爛さんはさっきまで何してたんですか?」


「え?業務スーパーで買い物を...っあ!自転車そのままだった!」


「爛ちゃん問題発生?」


「発生発生!急いで帰らないと...!ごめんね!帰りは気をつけて帰るんだよラミスちゃんとラルスくん!」


「えっ、あっはい!」


「わかった!またね、爛ちゃん!」


「うん!」



 あっちゃーリンネ怒ってるだろうな...。


 止めていた自転車に鍵を差し、足をかけて家に向かう。


 そういえば、ラミスちゃん「またね。」

 って言ってたけど、もしかして同じ高校だったりとか...?


「まぁ、そんな訳ないか。そうだったら白髪のオッドアイの子なんて有名だろうしっ!」


 急な坂を立ちこぎで思いっきり上がって、私は家の扉を開けた。




 爛が居なくなった路地裏に二人。


「双子ちゃーん、ご飯出来たわよー!」


 黒く赤いハートのトランプをイメージしたようなゴスロリの扉が急に背後に現れ薄紫色の髪を三つ編みにしたティリラがご飯の報告をした。


「あ、ティリラさん。いつもありがとうございます。今からそちらに向かいますね。」


 そういい双子は、メアと同じに闇に溶けるよう消えていった。

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