第8話 揉め事

 望みが叶えば本当に幸せになれるのだろうか。望みが叶えば本当に不幸になるのだろうか。

 契約というものは、本当に存在するのか、私にはまだ分からなかった。


「幸せなんて、誰にでもあるのにね。」


 私の望みは何を基準として叶うのだろうか。望みが喰われたら私はどうなるのか、出会ったばかりの彼はまだ何も教えてはくれない。


 今日は曇り空で、昨日に比べるとかなり気温も低い。


 リンネにはあまり外を彷徨くなと言われたけれど、食材を買いに行かないとご飯もろくに食べれない。

 カバンを持ち、未だ見つからない行方不明の兄の形見をポケットに入れ、私は家をでた。


 田舎と都会かと聞かれれば都会なこの街は、今日も賑わっている。業務スーパーへ向かって自転車をこぐ。公園を抜けると坂道があり、その先を行って左に曲がればすぐ目的地だ。


「家の近くにスーパーがあるのは結構助かるんだよね。」


 自転車を駐輪場へ置き、中へ入っていく。


 カゴいっぱいに商品を入れ爛はレジへ向かっていく。


 2週間後からは学校も夏休みとなり部活動以外に学校へ行くこともなくなり、安心していた。もし、学校で夢喰やあの時のフードの人が現れると厄介だからだ。残る2週間は何も起こらないこと祈っていると、レジの会計が終わった。


「3528円です。」


 リンネが家に住み始めるということで今までより食材の量も多くなり、値段も上がった。


 会計を済ませ、荷物を自転車のかごにのせる。


 そろそろリンネが帰って来るだろうと思い、自転車に足をかけこぎ始めていたら路地裏の方から声が聞こた。


 揉め事...?


 自転車を日陰に置き、念のためすぐ警察に電話をかけられるようにポケットに携帯を忍ばせる。


 気づかれないようにそっと物陰に身を隠し様子をみた。


「なぁなぁ、お兄さんたちについてきなよって。素直についてきたら痛いことしないから。」

「いやよ!ラルス早く逃げよ!」

「こらこら、嬢ちゃん逃がさないよ。」

「痛っ。」


 右手首を思いっきり掴まれ身動きがとれなくなっている。このままだと、彼女達が危ない。


 どうする...手持ちには携帯しかない。警察をまったところで、もう手遅れだろう。


 そうおもった爛は携帯の画面を電話からカメラにし録画の状態にセットした。


「あの、何してるんですか?」


 録画を開始したことを確認し、私は彼らのところへ行く。

(男2人と絡まれている女の子2人か...勝てるね。)

 勝ちを確信した爛は1歩前に出る。


「おいおい、嬢ちゃんも可愛いなぁ。お兄さんのところにこない?」


 ニタニタと笑う1人の男性がこちらへ近ずいてくる。


「いいえ、結構です。お断りします。」

「あぁ?痛いことしないから黙ってきなよ。」

「しつこいですよ、彼女達を離してあげてください。」


 空気が変わる。生意気な女だと思い、1人の男は白髪の双子の手首を抑え、もう一人の男は、爛に向かってナイフを向けた。


「待ってよ!あの子は何も関係ない!」

 白髪の少女こと、女装男子のラミスが声をあげた。

「そうだ、それに僕は男だ。勘違いはやめてください。」

 ラルスも掴まれているおとこを見てそう言った。


 だが、男2人は聞く耳を持たず笑っていた。


「じゃあ、殺しちゃおっかなぁー。」


 男は爛向かってナイフを突き出し走った。が、爛はスルリとかわし男の腕を掴んだ。


「背中がガラ空き、受け身とらないと脳震盪になるかもね。」


 そう爛は呟き、男の後ろから膝を沈めて、相手のひかがみにあて後ろに引き体制を崩した男を抱きかかえ、持ち上げ、空中で捻り倒す形で叩き落とした。


「残りのそこのお兄さんは、どうしますか?その子達を離すか、私に投げられるか。お好きな方を選んでください。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る