第5話炎天下

 魔法陣はその言葉と同時に爛を光の中に包んだ。未知なるエネルギーが彼女の体内に注ぎ込まれる。


「金色の...光...?」


 リンネは自分の目を疑った。

 守護能力を手に入れる時に光る陣は、緑、青、赤がありそれは宿る力の種類である。特に強さなどはないが金色の光だけは特殊だった。まだ、この世界に金色の光を出したものは彼女を含めて二人しかいない。そして、金色の光に包まれた者の能力は未だどのようなものなのか分かっていないのだ。


「ははっ...まじかよ。」


 光はやがて敵の領地の中全体に広がり結界を破った。破れた結界は粉々となり太陽の光でキラキラと輝く。


「なんかよく分からないけど、不思議!何でも、できそうな感じがする!」


 アラビアンな服の姿になった彼女はクルクルと回って楽しそうにしてリンネを見た。


「リンネ!出来たよ!!」

「おーおー、じゃあ麗爛。楽しそうな所だがお前は下がってろ。」

「えっ...待って、まさかリンネ今から戦うの!?休んで!」

「甘えたこと言うな、休んだら殺られるだよ。影でみてろ。」


 そう言い、たくさんの夢喰がいる所に鎌を構えて走っていった。


 照りつける太陽の日差しは増す。心配そうにリンネを見る麗爛は、容赦なく夢喰を切り刻む姿をみて圧倒されていた。だが、その戦いにすこし違和感を感じた。


「なんで、あんなに背後がガラ空きなのに狙わないの夢喰は...?ただ無駄に殺られているだけ...あっ...!」


 これは、ヤバイかもしれない。

 確かに彼は私より体力はあるし強い。だけど、このままじゃ彼が...リンネが殺られる...!


「所持金は...ポケットには325円...地味に足りる...よし。」

 その場を離れ少し先にある自動販売機へ行く。

「スポドリは...あった!」

 スポーツドリンクを二本買い、一口飲む。流れる汗を拭いすぐにリンネの所へ向かう。


「うっ...ぐぁっ...。」

「あれあれー?もうおしまい?」

「くっそ...。」


 壁に追い詰められている、異常な汗そして青ざめている顔。

「リンネっ...!!」

 来るなって口パクでされてるけど、そんなんもうどうでもいい。一刻も早くリンネを休ませないと...。


「ばっかやろっ...。」

「あれー?彼女がもう一人の...。」

 そう言うと、動けないリンネを放置し爛の方へ向かう。

「悪いんだけど、彼から始末したいから君には邪魔されたくないんだよ。」

 そう言うと、フードの男は右手から夢喰を出す。

「殺れ...。」

 一斉に襲いかかってくる夢喰。

 けれど、爛それに動じず怒りに溢れていた。

「契約者の望み喰うとか喰われるとか、そんなの今はどうでもいいのよ。とりあえず、そこをどいてリンネの所行きたいんだけど。」

 襲いかかる夢喰は爛から溢れる怒りとともに出る光に消されていく。

「...!へぇー、君なかなかやるね。気に入っちゃった。」

「バカ言わないで。」


 こんなことで時間を食われてはいけない。仕方ないと言わんばかりの顔をし、目の前にいる青と紫のフード男の胸元を掴んでは足をかけ、相手が抵抗する前に投げた。

 たぶん、背中を強打したはずだからしばらくは動けないだろう。


「リンネ、動ける…?」

「いや、痙攣してしばらくは無理だな...。」

「だと思った。これ飲んで、あと服も脱ぎな。」

「はぁぁあ?ここで服脱ぐとかお前変態かよ。」

「バカ言わないでよ。熱中症になって相手の思うツボに戦ってたバカリンネに言われたくない!」

 爛は手に持っていたスポドリを開けてリンネに飲ませた。

「横になって、足は顔より高くして。そしたら、服を脱いで体から熱をだす。いいわかった?」

 目に涙を溜める爛を見て言い返す事はできなかった。

「なに、怒ってんのに泣きそうな顔してんだよ。俺はこの程度じゃ死なねぇよ。」

「だとしても、私はもう...誰かが死ぬ姿...死にそうな姿を見たくないんだよ...。」

 涙を流す爛。やっちまったと思うような顔をするリンネ。

「わりぃ、心配かけて。つーか、お前よくあのフード投げたな。」

「私、自分の身は自分で守るために柔道やってたからね。」

 そう、ふふっと笑って爛は後ろを見た。

「リンネ、回復したら援護よろしくね。」

 そう言って後ろを向いた爛の目の先にはフードをとった男...いや、少年が映っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る