1章 望みと契約

第1話契約

 誰もいない1人の空間。


 窓をから差し込む月の光が部屋を照らし、ほど良い明るさとなる。

 16歳の誕生日を迎え、友達にたくさん祝ってもらって...楽しかったなぁ。

 そう1人で今日の出来事を思い出していた時だった。

 不意にカーテンが音を立て、部屋に置いてあるプリントたちが舞い上がる。


「なっ、何!?」


 突然の強風に驚き急いで窓を閉めようと手をかけた時


「なぁ、お前の望み叶えてやるよ。」

 1人の少年の声がした。


『契約』それは、命懸けのゲームの始まり。

『契約』それは、夢や欲望の塊。


 気がつけば、目の前の景色が飲み込まれるように変わり、白い空間が広がった。


 頭が追いつかない少女の事を気にもしないで声の元の少年は話を進めた。


「俺の名前はコーリア・リンネ。お前らが住んでいる世界の守りをしている者だ。」


 急な展開に少女は戸惑った。


「ちょっと待ってよ!勝手に話を進めないで!」


「あ?人の話は最後まで聞けよ、説明してやっから。」

「.....。」


 すると、リンネは自慢げな顔をしながら話を再開した。


「俺は救与界(キュウヨカイ)の者。救与界ってのはお前が住んでいる世界に幸福を与えバランスをとる仕事をしているんだ。」


「...幸福ねぇ...。」


 その一言に少女は顔を曇らせた。


「そして、そのバランスを崩そうと人々の幸せや希望を奪う世界がある。それが、幸奪界(コウダツカイ)だ。」


 深夜に突然現れては説明するリンネの話を聞いているだけの少女はだんだん眠たくなってきて、話を聞くことすら面倒くさくなってきた。



「あ、あの...そろそろ話をまとめてもらえませんか...?」


「あーそうだな。とりあえずお前の望み叶えてやっから、俺と契約しろ。」


「待って話飛びすぎ。」

「文句言うなよ、ホラ手かせ。」


 そう言い、リンネは少女に手を出した。


「契約については後で話すから。」

「分かったよ、命の保証は?」

「特にねぇ。」


 もう、これは話にならないと諦め少女は差し出された手を握った。


「私の名前は爛。神城 爛です。」

「おー。それじゃ、契約始めるからな。契約を結ぶ望みを賭けよう。そう俺が言ったらお前の望みを言えよ息ぴったりにな。」

「わ、分かりました。」


 周りの空気が少しずつ変わっていく。目を瞑り、呼吸を整える。


「救与界、コーリア・リンネID2854。今から契約を結ぶ望みを賭けよう。」


「私の望みは人々を幸せにしたい。」

「俺の望みは人々を不幸にすること。」


 気づいた頃には、もう遅く。

 正反対の望みで契約がむすばれた。

 唖然とする2人を気にせず、アナウンスがなる。



 __契約完了、健闘を祈ります__




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