4章
第8話 破滅
ここは帰路の高等人類の連絡船の船内。
「さて、そろそろ芝居は終わりにするか」
そう。高等人類が飲んだあの薬はまったく効いていなかったのです。
あの薬は実際にはただの白い粉に過ぎず、飲んでも記憶が消えるわけがありません。
ではなぜB星の人々にはこの薬が効いたのでしょう?それは実際に効いたのではなく、あのB星の代表が、
『薬は絶対に効いて記憶が消える』
と信じているだけに過ぎなかっただけなのです。
実際にB星でもあの薬で本当に記憶が消えるか試験はされ、効果を否定する報告も代表の元には届けられていました。しかし、代表は高等人類に対して絶対の権威を下に服従し盲目的に命令を信じて実行していたのです。
『この薬で確実に記憶は消える』
そう高等人類から伝えられていたのだから、それを否定するという考えは頭にまったくありません。効果を否定する報告書を上げた研究者は
「高等人類様の提示された方法を否定するとは、貴様は反逆するつもりに違いない!」
と言われ真っ先に粛清されました。
そしてあの星の住民たちも薬を飲んで記憶が消えたわけではありません。粛清を恐れて記憶が消えたフリをしていただけなのです。人口問題解消のために多くの人間が粛清され、困難な暮らしを強要されました。
それでも効き目もないただの白い粉を飲んで、幸せであるというフリをし続けていたのです。
生き残るためにはそうせざるを得なかった。そう、ただそれだけ。
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