ストレスフリーな作品
「なろう」などの投稿サイトでは、ストレスフリーな話が人気だ、という情報をよく見かける。
タグ的には、「俺TUEE」+「スローライフ」という組み合わせである。
実際、「なろう」のランキング上位でいつも見かける。
それだけではない。
「作中でストレスやフラストレーションを与えると、読者に嫌がらせをしている、とみなされる可能性もある」などと、2chなどで言われたりする。
他にも、「主人公がピンチに陥ると、読者は攻撃されていると受け取る可能性がある」とも言われる。
こういう記事を見ると、書き手は、「ひぇえええ、なら、どうやって書けばいいんだー」とすくみ上がることになる。
似たような話は、「なろう」以前からあった。
少年漫画では、「苦労や努力をしない主人公」が好まれる風潮が昔からある。
「努力」なんて共感されない、とジャンプの著名編集者が言っていた。
でも、昨今のweb小説ほどは徹底していない。
上記の言説は、管理人の思い込みで書いているわけではない。
例えば、カクヨムコンテスト第三回の募集要項にも次のように書かれている。
「物語の最初から最後まで成功・勝利する場面や楽しいシーンなど、盛り上がりの連続で続いていく、読んでいて気持ちのいい作品を求めています」
つまり、上記の言説は、それなりに真実味がある。
でも、こうした言説をまともに受け取っていたら、書き手は混乱するはずだ。
なにしろ、多くの「小説の書き方」本には、真逆のことが書かれている。
すなわち、主人公をいじめろ、ということだ。
フラストレーションがないとカタルシスもない、というのは、おそらく古代ギリシャ以来の作劇の一般論だろう。
フラストレーションからのカタルシス、という展開を求める読者も多いはずだ。
つまり、読者のニーズが正反対の方向に分離している、ということになる。
「なろう」風で行くのか。
カタルシスのあるオーソドックスな文芸で行くのか。
困ったことに、両立はできない。
書き手には難しい時代になったのかもしれない。
・・・と書くと、「なろう系」を批判しているようだが、そういう意図はない。
単純に、ニーズの問題だと思う。
通勤通学の隙間時間に読むには、「なろう系」が適している、。
じっくり読むなら、従来の文芸が適している。
それに、最近思ったのだが、「なろう系」というのは、古代や中世のヨーロッパで流行った「牧歌(パストラル)」に近いんじゃないか、という気もする。
「牧歌(パストラル)」は、ファンタジー的な田園世界で、美男美女が恋愛やスローライフを楽しむ、という内容の物語である。
そうだとすれば、2000年以上も前から、そういうストレスフリーな作品のニーズがあった、というわけだ。
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