第12話 アスパラベーコンのバターおにぎり

 俺が作ろうとしているもの。それはずばり、おにぎりだ。

 予想通りの答? 俺の料理の腕前を舐めないでほしい。

 俺が作るおにぎりは、その辺のコンビニで売ってるようなおにぎりとは一味違うぞ。

 それじゃあ、米が炊き上がるのを待つ間に、具材作りだ。

 用意するものは、アスパラ、ベーコン、バター、塩。

 まずアスパラの下処理をする。固い皮を剥いて細かく切ったら、柔らかくするために茹でる。この時部位によっては結構硬い部分もあると思うので、加減を見ながら茹でてほしい。

 次に、ベーコン。五ミリほどの角切りにしたら、フライパンで二分くらい炒める。油はひかなくていい。熱を通すような感じだ。

 そうして出来上がった具材を、炊き上がった米に投入してまんべんなく混ぜていく。

 次にバターを溶かして、そこに塩を加えて混ぜる。

 液体になったバターを手に塗って、具材を混ぜた御飯を好きな形に握っていく。丸型、俵型、色々あるだろうが俺の場合はおにぎりといったら三角型なので、三角になるように形作っていく。

 以上、アスパラベーコンのバターおにぎりの完成だ。

 味付けは洋風なので、こっちの世界の人間(人じゃないけど)の口にも合うだろう。

 これをリベロに手伝ってもらって、とりあえず一人分完成させた。

「初めて見る料理だな。こいつは何と言うんだ?」

 完成品を手に取ってしげしげと眺めながら問うシーグレット。

「おにぎりだ。具は色々種類があるんだが、此処の連中の口に合う味付けにしてみた」

「ほう。どれどれ……」

 あ、やっぱり食うんだな。

 シーグレットは大口を開けて、豪快におにぎりにかぶりついた。

「むおっ!」

 おにぎりを頬張って、声を上げる。

「米は白いまま食うもんだって思ってたが、こいつは美味い! ベーコンとバターの塩味がいいアクセントになってるじゃねぇか!」

 そのまま彼はがつがつとおにぎりを食べ進め、あっという間に完食してしまった。

 このおにぎりの優れてるところはな、溶かしバターで握るから風味がいいし腹持ちも普通のおにぎりよりいいって点なんだよ。

 やっぱり食事といったら腹持ちするかどうかは重要だからな。

 料理を平らげて満足そうにしているシーグレットを周囲で見ていた料理人たちから不満そうな声が上がる。

「料理長ばっかり食ってずるいっスよ。自分も食いたいっス」

「マオー、俺たちの分はないの?」

 わーわー言い始めたので、俺はそちらに向かって言い返した。

「食いたかったら自分たちで作れよ! それに言っとくけど、これは弁当用に作った料理なんだからな!」

「わぁ、人気だね。マオの料理」

 うふふ、とリベロがアスパラを切りながら笑っている。

「それじゃあ、皆の分も用意できるように、弁当頑張って作ろうか?」

「よし、皆手分けして弁当作りにとりかかれ! 作り方で分からねぇことがあったらマオに訊け! 手早く作れよ!」

 シーグレットの号令で、騒いでいた料理人たちが一斉に動き出した。

 皆おにぎりを作るのは初めてなので三角に握るところでちょっともたついたりもしたが、そこは丸く握ってもらうなどして臨機応変に対応してもらった。

 そうして、二百人分の兵士の弁当を何とか完成させたのだった。

 余った御飯は料理人の皆で美味しく頂いたよ。

 味付き御飯は珍しいらしくて、皆競うように食べてたな。

 今回もいい仕事したな、俺。

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