第11話 昼食の強い味方
兵士たちの朝食を作り終えた料理人たちに、シーグレットからの指示が飛んだ。
「これから遠征に行く兵たちのための弁当を作る。すぐに準備にとりかかれ!」
『はい!』
皿洗いに勤しんでいた連中の約半数が、作業を残っている奴に渡してばたばたと厨房の外に出て行った。おそらく倉庫に食材を取りに行ったのだろう。
鍋を洗いながらそれを見送っていると、横からつんつんと肩をつつかれた。
赤い髪、赤い肌の何とも熱そうな見た目の魔族が、布巾を手に俺のことを見つめている。
同僚のリベロだ。
「何だ?」
「マオの故郷では、弁当といったらやっぱりサンドイッチなの?」
聞くところによると、遠征の兵士に持たせる食事は手軽につまめて日持ちがするサンドイッチが主流なのだという。
魔族は現地調達した生肉なんかを豪快に齧ってるイメージがあったけど、その辺は人間と変わらないんだな。
日本でも、サンドイッチは昼飯の定番だ。
でも、日本にはもっと手軽に食える食事があるんだよな。
この世界にも米はあるし、それを作ろうと思えば作ることができる。
ただ、一人で作るとなるとそれはかなり大変だ。
「サンドイッチより腹持ちがいい弁当があって、そっちの方が主流だったな」
「へえ、どんなの?」
「そんなのがあるのか」
急に割って入る低い声。
シーグレットが、いつの間にか俺の背後に立って会話を聞いていた。
「よし。マオ、そいつを作れ」
「え」
唐突に言いつけられた命令に、俺は目を瞬かせた。
「作れ……っていっても、米がなきゃできないぞ。米、炊いてないだろ」
「おい! 今すぐ米を炊け!」
シーグレットの大声が厨房内に響く。
皿洗いを終えた何名かが、すぐに動いて大量の米を炊く準備をし始めた。
「これでいいだろ。さあ、作れ」
作れ……って、米炊き始めたばっかりじゃん。
まあ、米以外にも準備しなきゃいけないものがあるから構わないけどさ。
洗い終えた鍋をリベロに手渡して、俺は彼に言った。
「一人だと大変だからさ、作るの手伝ってくれるか?」
「うん、いいよー」
鍋を拭きながら頷くリベロ。
快活そうな見た目の割に大人しいこいつは、人の頼み事を嫌と言わずにやってくれる。俺の中での厨房の癒しだ。シーグレットとは正反対だな。
調理台の上を片付けて調理の準備を整えた俺は、野菜を入れてある箱の中からアスパラを取り出した。
さて。俺流の変わり種レシピ、披露してやろうじゃないか。
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