#2 光城学園女子高等学校籠球部(日ノ光さん)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881948214
バスケットおじさんを自称する身として、拙作『ファイトオーバー!』に先んじること2ヶ月あまり早く連載開始されていたこの作品は取り挙げないわけにはいきませんでした(挨拶)。
この作品も拙作『ファイトオーバー!』と同様、女子バスケの部活を題材とした青春スポーツものです。
ガチバスケとしての色もありますが、どちらかと言えば、いわゆるキャラクターものとしての色の方が勝っていると言えるでしょう。
メインキャラクター5人の造形からも、その点は読み取れます。
多少の語弊を恐れずに言えば、メインキャラの5人は「頭カラッポ系底なし元気少女」「天然ちゃん」「委員長」「ギャル」「オタク少女」であり、かなり"原色"に近い。
これは決して悪い事ではありません。タグにも表されているような、ライトノベル的な作品を目指すのであれば、読者からキャラクターへの理解を容易にするという意味で利点であるとも言えます。
実際、小生がこの作品を読む原動力となっていたのは、メインキャラクターたちの掛け合いのテンポの良さでありました。
ではこの作品の何が問題で★2にとどめたか。
最大の問題点は、「話がワンパターンすぎる」という点につきます。
いくつかのエピソードの概要を見てみましょう。
3話:バスケ部を馬鹿にするバレーサークルの人々と対立の末、新メンバー加入
4~5話:元ハンドボール部の陰湿ないじめっ子連中と対立の末、新メンバー加入
6~8話:メインキャラの一人が共犯を疑われた万引きグループと対立の末、新メンバー加入
18~20話:恐喝犯同然の御殿場商業の選手と対立、野試合で勝利するも正式に再戦する流れに
21~23話:非常に態度の悪い言動が目立つ御殿場商業の選手と勝負、最終的に勝利
似たようなエピソードが何度も繰り返されているため、「なんだか見たような展開だな」という印象、ひいては話が前に進んでいない印象をどうしても抱いてしまいます。
それが、"読み飽き"を招いてしまっているのが現状だと分析します。
また他にも、いくつかの問題点があります。
①人間の屑多すぎ問題
上記に上げたエピソードを見てもわかるように、この作品には不愉快な悪役が多数登場します。
不愉快な悪役を登場させる事、それ自体は悪い事ではありません。が、この作品は悪役が悪役としての仕事を果たしきらないまま、さらっとフェードアウトしてしまう事が多いので、消化不良感につながっています。
不愉快な悪役は、倒した時の爽快感、または自業自得な結末を迎えた事によるザマミロ&スカッと爽やか感を読者に提供できねば、片手落ちです。
その点の描写が弱いため、悪役に勝利しても何だかモヤモヤしたまま次のエピソードに行ってしまっている感があります。
②マイルストーン不明確問題
夢は大きく日本一! ……は良いのですが、そこに至るまでにクリアすべき過程が提示されていません。
このため読者(特に、部活スポーツ経験のない読者)の視点では、現在は日本一に至るまでの過程の何合目にいるのかがわかりません。
何をどこまでやればいいのか、クリアすべき課題は何か、当面の第一目標は何なのか。それを理解できているかどうかは、物語と登場人物たちへの感情移入度と臨場感に大きく関わってきます。
ルールのわからないゲームを見ても何ら感想を抱けないのと、要は同じです。
③試合描写淡白問題
小生が拙作「ファイトオーバー!」ではかなり気を使っている部分でもありますので、やや手前味噌ながら。
この作品の試合描写は淡白すぎます。単なる状況と行動の羅列になっており、似たような描写で淡々と進んでしまっている印象が強い。
もちろん、何が起こっているのかを正確に読者に伝える事は重要です。
ですが、そのひとつひとつの行動の意味、登場人物たちの心の動きなども描写しなければ、ドラマ性は生まれません。
さらに言えば、勝負の分かれ目となる瞬間やキャラクターの成長の瞬間などには描写の密度を上げるなど、文にメリハリをつける事で、読者を試合の世界に引き込むと良いでしょう。
④読むのしんどい問題
これは好みの問題もありますが……
この作品は紙媒体の小説と同様の書き方をしています。
行頭は一文字分のインデントを入れる。セリフを表すカギ括弧が入る際は改行する。段落の変わり目以外では改行は入れない。国語の勉強の作文の書き方としては100点です。
ですが、Web小説でこの書き方――特に"段落の変わり目以外では改行は入れない"は、読んでいてかなり体力と集中力を消耗します。
科学的な原理はわかりかねますが、Web小説の場合、適度に改行を挟んだ方が読みやすいとされています。少なくとも小生はこの意見に賛同しています。
いろいろと申し上げてしまいました。
総括しますと、メインキャラたちは良いのです。それだけで良作になりえるポテンシャルはあります。
ですが、諸々の問題が積み重なっている結果、スポーツものとしても長編ストーリーものとしても薄味となってしまっております。
読み手の視点を意識して細部を詰めれば、格段に良くなる事でしょう。
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