14.女神たちの休日


こんな機会でもなければ地上を闊歩する事もないだろう。これも社会勉強の一環と、活発なアナスタシアを先頭に繁華街に繰り出していた。

この世の美を有する三人がひと度道を歩けば誰しもが足を止め、息を呑む。我に立ち返るまで言葉もない。

ラファールとアナスタシアは人を寄せ付けないオーラをいつものように発していたが、アイレーナは人目も気にせずフライドポテトを頬張っていた。

おいしい…なんておいしいの。

外はカリッと

中はホクッと

味付けがまた堪らなかった。

うすしおペッパー…これがうすしおペッパーなのね!

余りの美味しさに店の名前が印字された、大した事のないカップのパッケージを見直すほどだった。そのほころんだ美しくもかわいらしい表情もまた、道行く人を更に魅了して止まない。

夜更けに受けた一報を今朝に知り胸のつかえは取れたのだろう。ルシファー本人からの電話ではなかったが、寄る所があるらしく帰りは夜になるそうだ。言伝てたルキアの声は眠たげにぼやけていた。

最後の日だ。「今しか味わえないわよ。味覚を存分に楽しみなさい」とアイレーナに言ったアナスタシアの口振りは気取るように目を細めていたが、ポテトを口に運んで目を大きくした表情になんだか安らぎを感じていた。

ラファールは相変わらず淡々としていたが気持ちは和んでいた。

(まだまだ子供ね…)

そう思うアナスタシアの上からラファールもそう思っていた。

ラファール→アナスタシア→アイレーナ


さぁ〜、真の目的は他にある。

アイレーナの洋服はバッチリ。天衣のワンピにデニム調のグレイのジャケット。オシャレと実用性を兼ね備えたチャンキーヒール。足のサイズが同じだったのは幸運だったわ。

アナスタシアは表情を隠し通せていると思っていたが、何件かのブティックに入り、ラファールの洋服を選ぶ姿は実に楽し気であった。

半神したままこうして麗らかに暮らせているのも、働いてくれている(資金源)ルキアのおかげね。頼み事があったら聞いてあげるわ。と心内で思いながらクレジットのサインを左手で走らせた。

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