2-1:二章 半径0センチの沈黙

【おはようございます! 久瀬さん、朝ですよー。清々しく爽やかな朝がやってきましたよ。カーテンを開けてください、雲一つない快晴です。今日も一日暑くなりそうですね、蝉がジリジリ鳴いています。でも部屋に閉じこもってクーラー点けっぱなしにしてちゃダメですよ。いえもちろん久瀬さんが嫌ならいいんですけども、やっぱり健康面を考えると外に出た方がいいんですよ。久瀬さんには病気になって欲しくないですから。えへへ。それにしても昨日はちょっと寝るのが遅かったんじゃないでしょうか。消灯時間が夜の三時というのは、流石に体に悪いですよ? あ、別に監視してたとかそういう訳じゃないんですけど、たまたま通りかかったら電気が点いていたものですから。わたしは久瀬さんが嫌がることはもうゼッタイしませんよ。よくよく考えてみたら、好きなのに相手を困らせてしまうなんて本末転倒、非常に愚かしい行為だったと断言せざるを得ません。なので、これからのわたしは、久瀬さんが喜ぶことだけをすると誓います。ゼッタイです。それはもう久瀬さんなんかには想像もつかないくらい凄いことまでしちゃいます。それはもう凄いのです。そこで、手始めに胃袋からがっぽり掴んじゃおうと考えまして。久瀬さんの好きなビーフストロガノフを作ろうと思うんですけれど、よかったら食べてもらえませんか? わたしこう見えても結構料理上手なんですよ。なんだったらパエリアもきんぴらごぼうも作ります。久瀬さん好きですよね。最近よく切れる包丁を買ったんです。もしよかったら家に来てください。それともお弁当の方がいいでしょうか。久瀬さんは女の子と一緒にお弁当なんて食べたことないですよね。でしたら今度山か海にでも行って食べましょう。そうですそれがいいと思います。今度日時もちゃんと決めましょうね。それとメールなんですけど、やっぱり一日一通は少ないと思うんです。せめて夜にお休みなさいって言いたいのです。いえ寂しいとかそういう理由では決してないんです。ただ久瀬さんのことが心配で。それとも、もしかしてわたしとメールするのは嫌でしょうか。久瀬さんメール見てもすぐに返信してくれないし、内容もなんか適当だし、短いし、もうちょっと、こう、あるじゃないですかー。……こほん。というわけで、今日も夜十時にいつもの公園で待ってますね。遅れるのは仕方ないですけれど、来てくださいね。忙しかったらムリに来ないでくださいね。でも久瀬さんずっと暇ですよね。暇で暇で大学生とは思えないくらい腐りきった青春を謳歌していますよね。ですからわたしと会っていっぱいお話ししましょう。そうすればきっと楽しいと思います。とても充実した時間になると思います。いい方向に転ぶと思います。それと、話が変わるのですが、】


 もういや。


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