31
「おーい、テイト、お前に手紙が…」
『あ、マスターだ』
エルーが俺の名前を呼びながら部屋に入ってくるが、浮いてる精霊達を見て何かを言いかけたままフリーズした。
「…手紙?」
言葉の続きを待つも、エルーは口が半開きで精霊を見て、床を見て、首だけを動かして周りを見てて状況整理してるっぽく、言葉を発しないので俺から聞く。
「…なあ、どうやってあいつらを召喚したんだ?俺が渡した剣は?」
「召喚だけなら魔術を使えば誰でも出来んだろ、あとあいつらは俺が作ってやった発明品で浮いてる」
俺の問いを無視して疑問を聞いてくるのでとりあえず答える。
「…発明品?」
「精霊用の金属防具一式だよ、この場合は防具と言うよりも装飾品?」
金属装飾一式…かな?と、見た目が防具じゃないので説明した後に言い換えた。
「…なるほど、もう完成してたのか…剣が見当たらないから一体何が起きてるのか分からなかったぞ」
エルーは納得したように呟いて頭が軽くパニックに陥ってフリーズしたかのような事を言う。
「で、何しに来た?手紙がどうこう言ってなかったか?」
「あ、ああ…そうだ、珍しくお前宛に手紙が届いててな」
「手紙?俺宛に?この研究所に?」
「ああ」
俺が再度聞くと思い出したかのように茶封筒を取り出すので、疑問を尋ねると頷いて肯定する。
「…差出人は?」
「おそらくあの准将だろう」
茶封筒の裏にも表にも何も書いてないのでエルーに問うと予想で答える。
「本当に俺宛か?」
「受付の子は、兵士に村人Bに渡してくれ…と頼まれたと言っていた」
「ふーん、ならマジであの元上司かもな」
俺宛じゃなかったら気まずいので確認したら、この手紙を受け取った時の状況を話すので納得して茶封筒の上の部分を破った。
「…ええ…封筒の中に更に封筒って…」
「なかなか厳重だな」
縦長の茶封筒の中から出て来たのは、手紙を入れるのに良く使われている横長の洋封筒。
…二つに折り畳まれたその洋封筒にはちゃんと『村人B』と受取人である俺を示す名前が書いてある。
『拝啓、村人B(敬称略)
以下略。
お茶会への招待が決まりました。
つきましては飲み物である紅茶の原料である茶葉を持参していただきたく…以下略。
これは大変な名誉…以下略。』
「…うっわ…なんだコレ?」
…俺は手紙の内容の酷さに思わず呟きを漏らして首を傾げてしまった。
…手紙の内容、マジであんな風に書いてあったからね?
敬称略とかイマイチ良く分からないし…ってか括弧とか書く必要ある?
しかも以下略ってなんなの?なにを略したの?
…あとは下に場所と日時が書かれてるだけで説明も何も無いし…
つーか書き方の酷さに気を取られてたけど、お茶会ってなに?
なんで俺が内容を分かってるのがさも当然かのように書かれてるん?おかしくない?
「…なにが書いてあったんだ?」
「ほれ」
「……な、なんだこの手紙…?」
不思議そうに聞いてくるエルーに手紙を渡すと内容を読み、ありえない…的な感じで呟く。
「どう考えてもあの元上司が書いたワケでは無さそうだな」
「…そうだな、流石にこんな酷い…常識の欠片も無い文章を書く人には見えない…」
俺の言葉に肯定するように呟くと手紙を返す。
…昔は普通に書けてたんだから、急に書けなくなる…って事はないだろうよ。
いったいどこの誰に書かせたからこんな酷い文章と内容になったんだか…
「ってかこのお茶会ってマジでなに?不思議の国のアリスに関係ある的な隠語?」
「いや、このお茶会というのは次期皇帝王候補達が集まる場だ」
とりあえず一番の疑問を聞いてみるとエルーには何か分かってるらしく、説明してくれた。
「へー、親睦会みたいな?」
「まあそんなところだ、中で何を考えてるか知らないが外はみんな愛想良くしている」
「ふーん…で、なんでその招待状とやらが俺に?」
エルーの説明を聞いてお茶会とやらを大方理解できたが、やはりまだ疑問は残る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます