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『…アレって?』


『なんかあったっけ?』


『…思い…ない…』


『…マスター達が道具の力で空を飛んでただろう?ソレを我々用に作ってくれるかも…と言っていたのをもう忘れたか…』



女性陣が顔を見合わせて不思議そうに首を傾げる様子を見てファイが呆れたようなため息混じりで説明した。



『あー!!アレ!』


『思い出したわ!…でも、アレってついさっきでしょ?』


『…そん……早く……ない…』



ユリが思い出して声を上げてニーナも同じように声を上げた後に疑うように聞き、アニーも賛同する。



「ま、お前らからしたらさっきかも知れんが俺からしたら結構時間があったからな」


『人間と我々では時間の認識が違うと言う…ならばあり得ない事では無いかもしれない』


「今の俺は人間じゃねぇ…」


『やったー!創造主ありがとー!!』



ファイの呟きに訂正するように返してる途中で、嬉しさが余ったらしいユリがお礼を叫びながら結構な勢いで飛びついてきた。



「…おっと」



俺はユリの飛びつき…もといタックルをちょっと身体を左に傾けて避け、両手で腰の部分をホールドして小脇に抱える。



『むー!避けられたーー!』


「うお…っと…」



両手両足をバタバタと暴れさせて不満そうに叫ぶので、危うく落としそうになりながらも立たせて離す。



『…で、どうやって浮くの?』


『……けない…』


「スラスター、オンで発動、スラスター、オフで解除だ」



お前らなら無詠唱でも可能だと思う…と、ニーナの質問に答えるように説明した。



『浮いた!』


『ふむ、いつもとは少し違う感覚だが…さほど問題ではないな』



さっそく無詠唱で発動させたんであろう精霊達は、剣を媒介に人化したとは思えないようにふわふわと浮く。



…おいおい、嘘だろ…いくらなんでも使い熟すのが早すぎやしねぇか?



あくまで俺がやったのは風魔術の発動させる事によって浮遊、飛行状態が出来るようになる…っつー、いわば物理的に浮力を生み出す方法だ。



こいつらの精霊状態による物理法則ガン無視の浮遊、飛行状態とは全く違う。



よくわからねぇけども、俺のは一応最低限の物理法則に則った状態になってるハズ。



…なのに、なぜそんないつもと変わらないようにふわふわと浮く事が出来る?



無重力で浮くのと、下から吹き上げる気流?的なのに乗って浮くのは勝手が違うと思うんだが…



なぜ同じ事が出来るんだろうか?精霊だから?



…いくら俺らも浮けるようになった、ったって空気に座るように浮けるワケは無いし…



上下ひっくり返したような体勢なんて持ってのほかだろう。



…俺らの『浮く』と精霊の『浮く』は根本的に違うんだろうな…



あそこまで自由自在に浮いて動くのを目の当たりにしてしまったらそう思うのも仕方ないって。



…そうか、そもそもあいつらは精霊…魔術を自由自在に操るなんて、日本人が箸を使ってご飯を食べるのと同じぐらい当たり前の事か。



『わーい!』


「一応言っとくが、人化して浮くと魔力の消費が普段の倍だから気をつけろよ」



はしゃいで部屋の中を動き回ってるユリを見て俺はみんなに聞こえるように注意した。



…精霊状態だと呼び出した術者の魔力を使うから、こいつらの魔力消費はゼロなんだよね。



だから今もその状態と同じだと思って調子に乗ってるとあっと言う間に魔力を使い切る。



そうなると浮遊、飛行状態は当然…人化まで解除されて最悪聖域に強制リターンだよ。



『おお、勇者よ…死んでしまうとは情けない…』的な?



いや、この場合は『おお、精霊よ…魔力を使い切ってしまうとは情けない…』か。



…そうならないためにも今の内に注意の一つでもしておかないと。



なんかあった時にそうなったら困るし。



…主に俺らが。

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