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「…多分あの皇女殿下じゃないか?」
「………あー、あのお嬢様」
「お前…今、忘れてただろう」
少し考えて予想してくれたが一瞬誰か分からずに考えて思い出すと、呆れたように指摘された。
「そらそうだ、昔の仕事の護衛対象ってだけで今の俺とは接点なんて無いし」
「ソレはそうだが…国民なら誰でも知ってるほど有名な人を忘れるというのは…」
「はいはい、どうせあたしゃは異国出身の非国民ですよー」
ド忘れしても仕方ない…的な言い訳をするとまたしても呆れたように言われたので適当に流す。
「そこまで卑下しなくてもいいんじゃないか?」
「んで?どうせ参加しねぇけど、この茶葉持参ってのは?」
「参加しないのか?高名な政治家や将軍クラスの地位を持つ人でさえ、招待されない限りは参加出来ないと言われているのに…もったいない」
疑問を聞くもスルーされて変な説明をされる。
「じゃあお前行けば?」
「いや、俺は既に招待されているから大丈夫だ」
封筒の中に入ってる参加証っぽいチケットを差し出すと意外な理由で断られた。
「…マジで?」
「ああ」
「んじゃリザリー達にでもやろうかね…」
「あいつらも招待されてるぞ、ショコラはなんとか調整して行けるみたいだが…ハルト達は今回は無理だと断ったらしい」
若干呆気に取られながら確認すると肯定されたのでリザリー達の名前を出すが、既に招待されているとの事。
…エリアのアホならこういう社交場的なのは暇でも断るだろうよ。
だってあいつ…そういう場では必ずと言っていいほど異性の女性に嫉妬されて、同性の男性に口説かれる。
そしてソレを俺とかエルーやマキナ達に笑われる…までがセットだからな。
何回も同じ経験してんだからもう絶対に行かないだろ。
…身内とか知り合いだけ…なら来ると思うけど。
「…そうか…って今回は?何回も呼ばれてんの?」
ちょっと考え事をしてたため普通に流しそうになりながら聞く。
「…今回で3回目、だな…お前の研究を発表した年と一昨年だ」
去年は招待されなかったハズ…と、エルーは顎に手を当てて思い出すように答える。
「へー、意外と呼ばれてんだな」
「…一応このお茶会にはドレスコード…と言うよりもフェイスコードに近い暗黙の了解があるらしい」
「…フェイスコード?」
「…いわばイケメンや美人や美少女、美少年といった端正な顔立ちじゃないと招待する時の審査で弾かれるとか…噂だがな」
エルーの小ネタ的な話に不思議そうに聞いたらまさかの内容だった。
…え、ええー…それじゃあなんで俺は弾かれなかったの?
変装技術があるから?最低限整った顔に変装して来いよ…的な感じ?
…嘘だろ…
…いや、待てよ…?
つー事は…そのお茶会とやらに参加してる女性は全員リザリー、マキナ、ショコラレベルの美女、美少女ばっかりって事か!?
だとしたら参加せねば!そんな事を聞いて参加拒否するワケにはいかんなぁ!
雰囲気を壊さないようにエルーやハルトよりはちょい劣るイケメンあたりの変装してけばいいだろうよ。
「…いやー、楽しみだな」
「…は?お前、さっき行かないって…」
「気が変わったんだよ、参加してんのが美女とか美少女ばかりって聞いたら行くしかないだろ!」
「…ああ、なるほど…知らなかったのか…」
俺がテンション高めに言うもエルーのテンションは変わらない。
…やっぱり何度か行ってるから慣れてんのかね。
「…で、お茶会って何をするんだ?普通に食べて飲んで喋るだけ?」
「ああ、余興とか司会進行とかは一切無い…ただ高級な紅茶やお菓子とかを食べて喋るだけだ」
『お菓子!?』
俺の問いに答えたエルーの言葉にそこらへんを漂っていたユリが食いつく。
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