09

数時間後。



妖怪が一時的に出なくなる時間に差し掛かり、前半部隊は終了っつー事で式卜のお嬢さんや式部と別れ…



一旦家に帰って母さんのマッサージの続きをしてあげ、それから後半部隊としてまた式部と合流。



「…さて、これで本当の事が話せるな…」



再度合流しての開口一番に式部が意味深にそう告げる。



「…そうだな、式使のお姉さんも式卜のお嬢さんも居ないし」


「で、半妖はどうだったのだ?」



実際に会ったんだろう?と頷く俺に式部が問う。



「多分お前らの予想通りだよ、見た目も中身もほぼ人間に近い…今のところ変わってる部分は気配だけっぽい」



先手必勝で直ぐに殺したから戦闘能力や異能の力持ちかは分からん…と、今の俺が知ってるだけの情報を提供した。



「お前ら…?…ああ、黒も入っているのか…一応俺の方は防衛省の内部を出来る範囲で調べてみたが大した情報は無かった」



俺の複数形での言葉に首を傾げるも直ぐに心当たりに思い至り、自分の情報を話す。



「ふーむ…おい、式部」


「なんだ?」


「お前、傍受不可能な空間を作れるか?」


「部屋があれば可能だ、俺の能力でプレハブみたいな家は作れるが…二重使役は疲れてしまう」



俺の問いに式部は全部やるには難儀だから嫌、と限定的ならば出来る事を告げる。



「…うーん…今のところ周りに誰も居ないし、誰かが聞いてるっつー事も無いんだが…どこの誰が聞いてるかも分からんし…」



俺の直勘だって優秀ではあっても万能では無いからな…ココで話して良いものか…



「そのレベルなのか?…ならばコレを」



俺が悩んでると式部が袖から式神を取り出してナニカに変化させた。



「今時糸電話て、お前…」


「コップに口を当てれば声は外に漏れないぞ」


「…まあいいか、聞いた話だと妖怪対策課の科学班が半妖を作ってるらしいぞ?」



式神から糸電話になった事に対して呆れたようにツッコむと、傍受不可能だと言われたのでなるべく秘密にしたい内容を糸越しに伝える。



「…なに?それは本当か?」


「裏社会のドンがそう言ってたが、本当かどうかは分からん」



式部の疑うような確認に俺は適当な感じで無責任のような言葉を返す。



「裏社会のドン……なるほど、昼前の電話はそういう事か…」


「あっちには何体か配備されててな…どの段階まで進んでるか分からんけど、結構いってるぞ」


「…既に護衛や警備で使えるとは…だが解せんな、同じ組織内に居るのに全く情報が掴めていない」



俺が出したワードで何かを察し、納得した式部だが…



更に報告すると納得いかないように呟く。



「逆に同じ組織だからじゃね?灯台下暗しとは良く言うだろ?妖怪を目の敵親の敵のようにしてる身内がまさか半妖に手を出すハズは…的な」


「…まさに灯台下暗しだな、確かに『たとえ親兄弟でも妖怪は滅せよ』が信条の忍者が人間を半妖化させるとは今でも信じられん」



軽い感じで予想や想像出来る可能性を話すと式部は苦虫を噛み潰したような表情になった。



「別に信じる信じないはお前の勝手だから判断は任せるよ…ただ」



ソレが本当だった時にどう対策を取るかっつーのが問題だ…と、ようやく本題へと入る。



「…そうだな、下手をすれば…最悪の事態になれば冥妖戦争の蒸し返しになる可能性がある」


「…それもあるけども、ソレより可能性が高いのがあるだろ?式使のお姉さんや藍架が半妖化の実験体に使われるっていう俺らにとっては最悪なやつが」



式部の的外れではないが、心配する規模が大きすぎる考えを一蹴して自分達にとっての最悪なパターンを挙げた。



…藍架さておき、式使のお姉さんは半妖化実験の実験体に選ばれる可能性は高いんじゃねぇかな?



なんせ組織からしたら忍者の中で最強、なおかつ式神一族では最も才能のある実力者だ。



そんな強い奴を半妖化させて更に強くしたらどうなるか?



向かう所敵なしの強さになるんじゃ…的な考えに至るハズ。



強い奴をより強くすれば外国さえも攻められるほどの戦力を…は流石に無いな。



…とりあえず、式使のお姉さんはその強さが禍して藍架よりも半妖化実験の被害にあう可能性が高いんだよね。



…可哀想に…強いが故の禍なんて…



…つーても式部が本気を出せば式使のお姉さんよか強いんだけどさ。



式神遣いとしての才能は式使のお姉さんの方がかなり上だとしても、こと戦闘能力に限れば式部の方が一枚上手。



…アイツはド変態のクセに女を立てるのが意外と上手いから、式使のお姉さんや式卜のお嬢さんの前ではその強さを発揮しないだろうけど。



その二人がやべーピンチにでも陥らない限りは。



「…そうだな、黒が半妖化されられたと想像しただけで腸が煮えくり返りそうだ」



俺が考える間に最悪のパターンを想像したのか、表情は変わらないのに雰囲気が変わる。



…おお怖…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る