08

「…赤兄が着けてるあの防具…アレは…?」



…人間の常識からいったらありえないような式部の動きを見て、式卜のお嬢さんは唖然としながら俺に聞いて来た。



「ああ、アレ?アレは旧文明の遺跡から発掘してきたアーティファクト」


「旧文明?あーてぃ?」



…俺が作ったって言って、凄い!と過大評価されたり忍者の組織に情報を流されたりしたら困るので…



もっともらしい嘘を吐くも良く理解出来なかったらしい。



「簡単に言えば昔の人の発明品…って事になるね」



ほんの少し詳しく言えば昔の高度な文明を持ってた時代の物…かな?と、なるべく理解し易いように分かりやすく説明する。



…人はソレを『旧時代の遺物』と呼ぶが。



「…へー、そんな物が…」


「まあでもあの変態を見てると分からないかもしれないけど、扱いは難しいよ」


「…赤兄はどうしようもない変態ですけど、そういう面は凄いですから…」



式卜のお嬢さんは式部を見ながらなんとも言えないような顔で呟く。



「…そう言えば、うちの愛梨のために上層部に喧嘩売ってくれたんだって?」


「…愛梨は友達ですからね、ソレに守るはずの民間人を人質に取り逆に危険に晒すなんて許されて良いハズがありません」



金属防具一式のデータをミニノートに書きながら話題を変えるように聞くと、私情とプロ意識が混ざったような答えが返ってきた。



「…あんまり危険な事はしない方がいいよ?誰だって自分のせいで友達が危険な目にあう、なんてのは嫌だろう?」


「…そう、ですね…」



女の子が我が身を顧みず、的な感じで危険な状態になるのは流石にアレなので…



その可能性を少しでも減らすために一応軽く忠告する。



「俺の家族にしでかした事は俺が必ずソイツに落とし前だか責任を取らせるし」


「……!じゃあ、東京支部が壊滅寸前にまで追い込まれたのは…!」



俺の言葉を聞いて何かに思い至ったのか、驚いたようにコッチを向いた。



「そう、俺…仕事を忙しくしてごめんね?脅しても聞かなかったから、つい実力行使しちまった」


「そうだったんですか…」


「恨むなら恨んでいいし、復讐してもオッケーだよ?」



落とし前を付けて発生した余波だか被害だかで多忙にした事を謝って、ソレについての責任を負う事を告げる。



別に恨まれたところで痛くも痒くもねぇからな。



復讐たって暴力で来ても嫌がらせされても俺以外に害が及ばないんならどうとでも対処出来るし。



知人家族友人に害が及ぶんならそれなりの手段を使うけども。



「…いえ、程人さんの警告を無視した支部長が悪いです…そしてソレに賛同した人達も」



その結果が今の状況なので自業自得だと思います…と、式卜のお嬢さんは忍者側に非があると認識したらしく俺を責めはしなかった。



「お嬢さんにも情報が回って来てればこんな状態にはならなかったかもしれないのにねぇ…」



俺は暗に忍者の組織が情報規制だか言論統制だかをして、意図的に式神一族にあの情報を流していなかったような感じの含みを込めた言い方をする。



「そうですね、私が知ってたらどんな方法を使ってでも絶対に止めてました」


「どんな組織も一枚岩ではいられないからなぁ…半妖の問題もあるし…」



式卜のお嬢さんの決意を聞いてちょっと心の栓が緩み…



俺はついポロっとまだ伏せて置くべき不確定な情報を呟いてしまう。



…やべっ、式卜のお嬢さんが知るにはまだ早いと思うのに…



っつってもどうせ式部が最後の一体を倒しそうだから別にいっか。



所詮は女子学生、口で丸めこみゃあどうとでもごまかせるだろ。



「…半妖…?」


「あ、最後の一体を倒した」



やっぱり式卜のお嬢さんがワードに反応したので、このエリアでの戦いの終了を伝えてごまかすように式部の所へと歩いた。



「スラスター、リアクター、オフ…ふむ、前回に比べたら多少は動き易くなっている」


「まだまだ調整や改善は必要だからな、まだ研究段階でしかないし」



俺を見た式部が魔術を解いて感想を言うのでまだ最終形ではない事を伝える。



「あの…半妖っていったい…」


「ああ、半妖ってのは式部から聞いた事だからな…所詮は都市伝説だろ?」



式卜のお嬢さんは俺達の近くまで駆け寄って来て疑問を問いかけてくるので…



俺は式部にごまかせ、とアイコンタクトをして話を振った。



「…そうだな、俺も噂話程度にしか聞いてない…一応真偽を探ってる最中ではあるが、おそらく都市伝説の域を出ないだろう」



俺の目を見て今の状況を理解出来たらしく式部は本当とも嘘とも取れるごまかし方をする。



「…そうなんだ…半妖…」


「実際に居るとしたらもっと問題になるんじゃね?人間寄りなのか、妖怪寄りなのか分からねぇし」


「…確かに、そうですね」



微妙に半妖の存在を信じてそうな感じで呟くので、納得させるような嘘を吐いた。



すると式卜のお嬢さんは俺の思惑通り嘘を信じて納得したように頷く。



…危ね…



半妖がなんなのかを知らない今の段階で式卜のお嬢さんに深追いされて、手遅れに!なんて展開は避けたいからな…



…なんとかセーフ?

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