07

「!?ソニックブーム!」


「おお!やっぱり分かるか!」



式部が俺を指差して若干早口で技名を叫ぶのでちょっと嬉しくなり、テンションが上がる。



「当たり前だ!結構やり込んでたからな!」


「んじゃ技名を言えよ?」


「サマソー!ソニックブーム!サマソー!ソニックブーム!サマソー!ダブルサマソー!」


「…何やってるんですか?」



雑魚妖怪相手に某ゲームの某キャラの技を使ってテンション高く遊んでると…



式卜のお嬢さんが呆れたようにため息を吐きながら聞いてきた。



「え?サマーソルトキックからの着地即ソニックブーム?」


「そしてコンボの締めにサマーソルトキックからのダブルサマーソルトキックだな」


「…なんですか?ソレ?」



状況を簡潔に説明したのに理解出来てないように冷めた目で再度聞かれる。



「ゲームの技」


「ゲーム?」



分かりやすく答えたのに、意味分からない…といった表情で少し首を傾げた。



「二次元でしか出来ないような技を三次元の現実で出来るって楽しいよ?」


「…そうですか、楽しいなら何よりですが…赤兄」


「…なんだ?」



式卜のお嬢さんと会話が噛み合ってないような俺の言葉を聞いて、矛先が式部へと変わる。



「遊ぶのは良いけど、ちゃんと仕事してくれないと困るんだけど…あ、程人さんはちゃんと倒してくれてるので全然問題ないです」



式卜のお嬢さんはまさかの注意なのか説教なのかを始めたが、どうやら俺はその対象から除外されたらしい。



「それなら大丈夫だ…問題ない、この程度の奴らなら遊んでいても直ぐに倒せる」


「…赤兄が時間かけてる分、私に負担がかかるんだけど?」



むしろ遊びながらでも余裕だ…という式部に式卜のお嬢さんが不機嫌そうに疑問形で返す。



「…だから座っててもいい、って言ったのに…」


「…何か言いました?」


「いえ、あっしは何も」



わざと式卜のお嬢さんにギリギリ聞こえる音量で呟いたら笑顔で振り向いたので、アッサリと折れる事に。



「いや、この程度の雑魚妖怪が相手じゃあ負担も何も無いと思うんだが…」


「…あー、分かった…じゃあもうこのエリアは任せる」



式部の苦笑いに式卜のお嬢さんはイラついたかのように投げやりに言い、お言葉に甘えて座らせてもらいます…と俺に告げて背を向けた。



「…あーあ、怒らせちまったな…この後のフォローどうすんだ?」


「なに、さっさと終わらせてこの和菓子をあげればいい」


「…またあのかりんと饅頭かよ」



俺の問いに式部は袖の中から見覚えのあるお菓子を取り出す。



「紫は意外とこれが好きでな…何かあった時のために、と念のために持って来た」


「おー、ナイス判断…んじゃ、さっさと終わらせる…前に武器チェンジだ、オールオフ」



スッとお菓子を袖の中にしまう式部を褒めつつ『柄(仮)』を指差し、魔術の発動を解除する。



「おお!データは取れたのか?」


「まあな」



嬉しそうに『柄(仮)』を差し出した式部から受け取ってポケットに入れ、金属防具一式を外したそばから渡していく。



「その刀の形をしたやつはかなり使い易かったぞ」


「だろうな、重さを感じないのはかなりのメリットだし」



金属防具一式をつけながら『柄(仮)』の感想を話すので適当に返して、魔石の魔力を使った魔術を無詠唱で発動させてみた。



…お、一応は無詠唱でも発動するのか。



だが詠唱破棄よか鋭さが足りないような…気のせい?



…まあ既にこの剣だか刀だかの刃物の形をした武器に鋭さは要らないんだけどな!



俺はいつものごとく魔術で形作られた刃を地面に伸ばし…



実験用の相手数体以外の雑魚妖怪に巻きつかせる。



そして…石化、爆破のコンボにより雑魚妖怪どもはアッサリ消滅。



「…なんだ?今、程君が攻撃したのか?」


「おう、本場仕込みの手品だ」


「……きゅ、急に妖怪が爆発した…」



無詠唱での攻撃だったから周りの二人には何が起こったか理解出来なかったらしい。



とりあえず俺に聞いてきた式部には教えてあげようと、疑問に答えるように嘘で返す。



「…手品…また不思議な技を習得したものだ」


「あとは任せたぜ?無いと思うが危なくなったら助けを呼べよ」



嘘を信じたのか、それとも深く追求せずに流したのか知らないけども…



データを取るための舞台は整えたし…俺は念のためにそう告げて式卜のお嬢さんの所へと向かう。



「…あの、さっきの…程人さんがしたんですか?」


「ああ、うん…手品ってやつね」



式神で出したっぽい椅子に座ってる式卜のお嬢さんの隣に立つと遠慮がちに質問されたので、式部と同じく嘘で返し…



タネも仕掛けもごさいません…と信じさせるように告げる。



「…手品って…」


「納得する必要は無いよ?意味もワケも分からない不思議だからこそ、面白くて楽しいっつーのが手品だし」



納得いかなそうに呟かれたのでこれ以上の追求を避けるため、口八丁で適当にごまかす。



…こんな感じの事を言やぁもう詳しく聞こう…なんて追求する気も起きねぇだろ。

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