06
「…さて、と…紫ちゃん…もとい式卜のお嬢さん、こいつらの相手は俺らがやるからそこらで座ってていいよ?」
地面に降りて式卜のお嬢さんに手を差し出しエスコートするように降ろした後に、俺は押し付けない感じでそう告げた。
…流石に大した交流もないのに下の名前呼びは馴れ馴れしいと思われるからな…
不愉快とか不快とかマイナスな印象を与える前に呼び名を変えねば。
そのままだとチャラいナンパ野郎だと思われそうだし。
…そんな間違った先入観での偏見で見られるのは勘弁。
「…いえ、お気遣いなさらずに…私の身を案じてるのならば結構です」
発明品のテストの邪魔だから退かそうとしたが、別の意図だと捉えられてたらしく普通に却下される。
「そう?…まあ戦いたいってんなら止めはしないけどさ…金属防具一式」
俺は直ぐに引いて小箱から金属防具一式を取り出す。
「おお!また使わせてくれるのか!?」
「俺の後にな…コレでも使ってろ」
それを見た式部が期待したかように興奮した様子を見せたが、主観的なデータ取りが先のため『柄(仮)』を投げて渡した。
「…ん?なんだコレは?」
「まだ名前が決まってない武器だよ、とりあえず今は『柄(仮)』と呼んでるが」
「…ふむ、『ヒルト、かっこかり』か…」
金属防具一式を着けながら式部の質問に答えると『柄(仮)』を珍しそうに翳して見る。
「昨日、一気に妖怪を殲滅したろ?その武器のおかげよ」
「…そう言えばその金属防具と似たような技術で作られている、と言ってたな」
俺の言葉に昨日の説明を思い出したような事を言う。
「まあ魔術が使えないお前にはソレを使い熟すのは無理だろうけど…普通には使えるから安心しな」
「魔術?…外の国の技術か…」
「忍術を常日ごろから扱ってるなら多少は使えるが、お前はかじった程度だろ?」
最初に挑発するような事を告げてからその理由を話す。
「…そうだな、自由自在に操れてもやはり本職には敵わん」
「ソレは刀身を忍術で形作る設計だ…リアクター、オンで重さの無い名刀になる」
式部が自分の力量を認めてるらしいので使い方をレクチャーした。
「ほう…?リアクター、オン……なるほど!」
「刀に見えて刀じゃないから敵の攻撃はガード出来ないからな?あと、金属防具一式みたいに魔力の込め方で刀身の長さを自由に操れる」
『柄(仮)』を発動させてどういうモノかを納得している式部に更に詳しく説明し、金属防具一式を装着し終える。
「ほお…!鍔が無いから持ち方に多少不安を覚えるが、軽くて刀身を長くしても重くならないというのは素晴らしい…!」
「…どう使おうが任せるけども、調子に乗って俺や式卜のお嬢さんとかの味方を巻き込むなよ?」
お前や式卜のお嬢さんはその刀身が見えてるかも知れんが、俺には見えないんだからな…と注意のような忠告をし、いざテストへ。
「スラスター、オン」
攻撃性能に関しては改善すべき点が一つも見当たらないパーフェクトな出来なので、機動力の改善具合だけを確かめられれば良い。
…というワケで俺は魔石の魔力を使って詠唱破棄での魔術を発動させる。
「…なんですか?ソレ」
移動時の感触確かめるために軽く滑走してると式卜のお嬢さんが不思議そうに聞いてきた。
「男のロマンの塊ってところかな…リアクター、オン」
ちょっとごまかすように返し、一応攻撃時の機動性の改善が出来てるかを確かめるため…
更に魔石の魔力を使って詠唱破棄での魔術を発動させる。
…そういや式部は重複して発動させていたが、俺は初めてだな…
意外な事に気づきつつも手刀の構えで剣を形作り、氷上を滑るように滑らかな動きで雑魚妖怪との距離を素早く詰めて横一閃に斬り裂く。
うむ、まだ普段通りの動きからは程遠いが多少は動かせるようになって来たぞ。
「まるで地上とは思えない動きだな!」
「いよっ!」
式部の賞賛を無視してそのまま進み、雑魚妖怪の目の前でバク宙するかのようにサマーソルトしながらの斬撃を食らわせた。
どうだ!本来ならゲームの中でしか出来ない技…
サマーソルトキック(斬撃版)だ!
「ッサマソー!」
俺はゲームの技を現実で出来た事に多少感動してちょっと興奮した結果…
柄にもなく技名を口に出してしまう。
「おお!まるでかの有名な格闘ゲームのキャラが使ってるような技じゃないか…!まさか現実でソレが拝めるとは…!」
「…お前元ネタ分かるんかい、意外とゲームしてんだな…」
式部も俺の技を見た後にソレが何か分かって興奮した反応を見せたのが意外過ぎてついツッコむように呟く。
…んじゃ、当然コレも分かるよな?
ちょっと楽しくなって来た俺は式部を試すように胸の前で腕をクロスさせ、雑魚妖怪に向けて腕を振って衝撃波を放つ。
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