05
「…おい、なんだこれは?」
「見てのとおりだが?」
夕飯後に金属防具一式や『柄(仮)』の調整を多少して、式部と電話で待ち合わせ場所を決めてそこで合流すると…
「…今日はよろしく」
何故か女子校生ぐらいの少女が俺をジロジロと見て挨拶する。
…式部と一緒に居るからおそらく式卜のお嬢さんだろうけど…
この変態や藍架からは何も聞いてないんだが。
「見てのとおりって…お前、ついに未成年に手を出したのか?式使のお姉さんが居るのに?」
「ソレは誤解だ、程君も一度は会っているだろう?式卜家当主の紫だ」
一応違ったらアレなので…式部を弄るように、浮気してんの?的なニュアンスで聞くも冷静に訂正されて紹介された。
「愛梨のお兄さんで藍架さんの弟さんですよね?…昔の人間の時から話は聞いていました」
「ああ、これはどうもご丁寧に…俺も噂は…」
って、なんだこれ?まるっきり初対面の猫を被った時と一緒じゃねぇか。
デジャブやわ。
「…どういう人間かもご存知のつもりなので、昔のように猫を被って貰わなくても結構です」
「ああ、そう?それじゃ遠慮なく」
ありがたい事に…冷たい目で俺を見ながらそう言ってくるので、普段通りの喋り方に戻す。
「…それでは行くとしよう」
「…いや~、紫ちゃんだっけ?昔から可愛いかったけど更に可愛くなったね、できるならもっとこう…蔑むような冷たい目を向けて欲しいんだけど…」
「…猫を被る必要は無くても、本性を隠す必要はあると思います」
式部が式神で大鷲を出して出発を告げるので先に乗り、式卜のお嬢さんに手を差し伸べながらリクエストするも…
手を取って乗った後に嗜められるように却下される。
「こりゃ失礼、人間性を知られてるっつーからつい」
「…まさか程人さんがドMだとまでは知りませんでしたよ」
「程君がドM…?ははっ!ソレは確かに分かっていないな」
大鷲が飛んで謝罪すると式卜のお嬢さんに呆れたようなため息混じりで呟かれ、ソレを聞いた式部が笑う。
「…ドMじゃないの…?」
「さあ?どっちだと思う?」
「強気な女やドSな女を堕とす事を楽しむのはドMとは言わないだろう?程君は生粋のサディストだ」
式卜のお嬢さんが不思議そうに呟くのでからかうように聞いたら、式部がちょっと間違えてる事を言った。
「俺は女に対して暴力を振るう趣味はねぇ、せめて精神的なドSと言えよ」
式部の言い方じゃ、女にダメージを与えて喜ぶ…みたいな捉え方をされそうなので少し訂正する。
「そうだったな…たとえ敵でも女となれば手を出さないのならサディストではないか」
もっとも違う意味での手は出すかもしれないが…と式部はふざけた事を呟く。
…この野郎…式卜のお嬢さんの前でなんて事を…そんなに俺の評価を下げたいのか?
それとも、俺と同類だ。ってお前のド変態の仲間だと思わせたいのか?
どっちにしろ御免被るわ!
「…おい」
「大丈夫です、分かっています…程人さんがどうしようもない女好きだという事は黒姉や藍架さん、愛梨からも聞いていますから」
俺が否定しようとしたら式卜のお嬢さんに中々酷い事を言われる、っていう。
「はっは!やっぱり程君は周りからそう思われてるんだな」
「うるせえ、ド変態じゃなくて女好きなだけまだお前よりはマシだ」
「「ソレは言えてます(るな)」」
楽しそうに笑った式部の評価を下げて『女好き』による好感度の下り幅を低くしようとしたら…
まさかの式卜のお嬢さんと式部の声が被った。
…え?お前、自分がド変態で俺よりも卑下されるって自覚してたの?
予想外の式部の自虐ネタに反応に困る俺と式卜のお嬢さん。
…結局、そこからは特に会話が生まれず微妙な空気のまま指定された街へと到着する。
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