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「まあまあ落ち着けよ、たとえ式使のお姉さんが半妖化しようがお前の気持ちが変わるワケでもないだろ」


「当たり前だ、だが黒の気持ちを考えると…」



ピリッとした雰囲気を和ませるために言ったのに、何故か更にピリピリと殺気の一歩手前…的な感じに悪化した。



「別に俺とお前が味方ならソレで良くね?見た目は変わらないんだから一般人には分からないし、忍者が来たら叩き返せばいいだけの話だろ?」



なんなら俺がやったみたいに上の方を力づくで脅せば良いじゃん、と軽いノリで最悪の事態を想定して提案する。



「…そう、だな」



式部が頷いて雰囲気も和らいだところで…結構離れてた距離にいたハズの雑魚妖怪共が、俺らを追ってなのか徐々に近づいて来ていた。



「だろ?ま、そんな最悪な事態にならないために今対策を取るんだが…な」



つー事で俺は『柄(仮)』を手に式部にそう言いながら魔石の魔力を使い…



無詠唱での石化、爆破という例の即死コンボで雑魚妖怪共を瞬殺する。



「…相変わらず凄い技だな」


「そうか?雑魚相手じゃこんなもんだろ」



雑魚や人間が相手だとコレもバニシュデスと一緒で一撃必殺の即死技…になるのかね?



やっぱりバニシュデスと同じでこの世界以外の化物レベルの奴らだと必殺技にはならなそうだが。



…良く考えたら結果的に見れば石化、爆破のコンボとバニシュデスって一緒かも。



ある程度の化物レベルからは多少のダメージを与えるぐらいの効果にしかならないワケで…



しかも防ぐ事もできなそうだし、どっちもガード不能技の分類になると思われ。



…良く考えたら雑魚や人間相手だとサクサク殺せるから利便性は凄いな。



…『柄(仮)』のデータ取りが終わったら石化、爆破のコンボ技だけは裏技にしとくか…



妖怪が相手の時は面倒だから普通に使うけど。



「雑魚とはいえ妖怪の生命力は鬱陶しいからな…俺でもこう直ぐには倒せん」



謙虚?な俺の言葉に式部は自分と比較して褒めるような事を言う。



「普通に戦ってたらな…で、どうすっかね?」



それをスルーしてどう対策を取るか?の意見を求めた。



「…ふむ、とりあえずは科学班の部署を探るのが得策だろう…バレないようにやらないと意味無いが」



式部は、証拠隠滅や隠匿をされたら探しても無意味なのであっちに情報が掴まれないように行動に移す。という意味と…



万が一シロだった場合は言い訳出来るように周りに知られてはいけない、と意味を込めて提案する。



「それが出来りゃ一番なんだがな」



一応式部は仕事中だから通信班と結構な頻度で連絡を取ってるから下手に動くとバレてしまう。



…そもそも妖怪が出現してる地区に行けと言われてるのに行かなかったら怪しまれるし…



周りに変な誤解を生む危険性が。



…だからこの場合は妖怪を退治しつつ、防衛省内部に侵入…って形を取らないといけない。



それだと、流石に同時進行は無理じゃね?って思われて俺らの仕業だとバレる可能性はほぼゼロになるから。



「…やはり難しいか…」


「お前の式神でどうにかならねぇの?」



自分で出した案を困難だと呟く式部に俺は単純な疑問を聞いた。



「残念ながら今はタイミングの悪い事に、完全自律型の式神は保険用を含めて二枚しかないのだ」



他は別件や保険で出払っている…と、なんのも運の悪い答えが返ってくる。



「…マジか………一体は使えるのか?」


「ああ、俺の分か程君一人分の戦力はある」


「…しゃーねぇ、じゃあ俺の分は自前でなんとかするわ」



確認したところ、式部の考えた対策案を実行するにはあと一人分の戦力が必要になるらしいので…



背に腹は変えられない、っつー事で俺は血を操る能力で生き返らせた…いわゆるゾンビと呼ばれる戦力を使う事にした。



死んだ人間を血を操る能力で生き返らせ、仮死状態で保存し…



いざという時に(主に魔界で)戦力として使う俺の裏技の一つ。



…まさかこの裏技をこの世界で、しかも異国で使う事になるとは…



大体は一国を陥とすとか、そんなレベルの大群と戦わざるを得ないような時にしか使う機会が無いのに…



…世の中ホントどこでどうなるか分かったもんじゃねぇな。



「…自前で?」


「布」



式部が不思議そうに確認して来たがスルーしてポーチから小箱を取り出し、その中からシーツのような布を取り出す。



「…何を?」


「ほーら、良く見ろ…何も無いだろ?」


「ああ」



俺の行動の意図を把握出来ないかのように聞いてくる式部に布の裏表を確認させて聞き返すと頷く。



「ててれ、てってれれれー……ほいっと」



地面に布を置いて適当なリズムを口ずさみ…食料保管庫から仮死保存してる死体を一体、影移動させる。



「…!?…なっ…!?」



急に布が盛り上がった事に驚いたと思えば更に中から人が出て来た事にも驚愕する。



「…タネも仕掛けもございません、ってな」



影移動をごまかすために手品の口上を述べてから小箱に布をしまう。

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