04
お前が作ってるソレ、もはや料理じゃねーし。
…そもそも食べれると思ってんのか不思議でしょうがない。
洗剤や絵の具、液体のりってどう考えても食べ物じゃねーよ。
単体では絶対に食べられないし食べようとも思わないじゃん。
なんでそんな物を料理に使う?
食材を無駄に捨てる事になるだけなのに、何故ソレが分からない?
料理が上手下手の前に、飯ウマ飯マズの前に…
食べれる物と食べれない物の区別ぐらい付けれるようになろうぜ?
料理を始めるのはそれからだから。
そんな区別も付かない内から料理するなや。
そして作ってる最中に味見しろ。
味覚障害か極度の偏食家じゃない限りは、自分が食べられないような物は他人だって食べられないかも…と思ってくれ。
自分は無理だけどあの人ならへーきへーき、じゃねぇよボケ。
……っと、過去を思い出してつい意味の無い愚痴を吐き出してしまったか…
「料理は愛情ねぇ…そう言えばお父さんも昔そんな事を言ってたかも」
やっぱり親子ね、と母さんが懐かしむように笑う。
…いや、料理は愛情って言葉自体は誰でも使うんだから親子関係無くね?
しかも料理は愛情、って『作る側に愛情があれば美味しく作れる』んじゃなく…
『食べる側に愛情があるから多少変な味の料理でも美味しく食べられる』って事だぞ?
恋は盲目っつーから愛は無味ってとこかな…?
愛する人が作ってんだから普通ちょい以下ぐらいまでの味ならギリギリ美味しく感じるだろ。
なんなら普通から普通以上の味ならかなり美味しく感じると思うよ。
実際、料理を作る側に必要なのは愛情より技術だし。
…食べる側には多少の味なら笑って許せる心の広さが欲しいとこだが。
…まあプロや俺らみたいな料理の技術がある奴らからすれば食べる側に求める事なんて無いけど。
そもそも普通に美味い料理を作ってれば文句なんて言われようが無い。
「お兄ちゃんはそろそろ出るらしいから、お兄ちゃんの分から先に焼いてくるね」
「あ、うん」
俺がそんな事を思いながらボーっとテレビを見てると愛梨がキッチンへと移動した。
…上手く焼けるか、熱した油が跳ねたりして火傷したりしないか、とか心配になるが…
見に行っても過保護扱いされてキッチンから追い出されそうなので、愛梨を信じて待つ事に。
…テレビのニュースを見る事10分後。
「はい、お兄ちゃん!」
「おお、上手く焼けてるじゃん」
「えへへ…我ながら上手に焼けたと思ったの、味を保証出来ないのが残念だけど」
ハンバーグと野菜の乗った皿が目の前のテーブルに置かれ、焼き具合を褒めると愛梨が嬉しそうに笑う。
「味付けは後から上手くしていけばいいさ…いただきまーす」
適当にフォローして早速食べようと皿の上に乗ってるフォークを手に取り、軽く合掌する。
「…どう?」
「…お、美味い、普通に美味いぞ」
ハンバーグをひと齧りするや否や愛梨が感想を求めてくるのでお世辞じゃない率直な感想を返す。
「ほんと!?」
「ああ、味付けがちょっと濃いけど…単体でも普通に美味いし、野菜と一緒に食べても丁度良くて美味いよ」
嬉しそうに聞き返す愛梨にさながら簡単な食レポっぽいような事を言った。
「良かったー…美味しくなかったらどうしようかと思った…」
プルルル…プルルル…
愛梨が安堵すると俺のケータイが鳴る。
「もしもし?」
「あ、程人?今日の組み合わせが決まったんだって」
「…組み合わせ?」
口の中の物を飲み込んで電話に出ると藍架が良く分からないような事を言って来た。
「今日のあんたのパートナー、とりあえず式部さんとらしいから…じゃ」
「あ、おい…」
あっちもあっちで忙しいのか、藍架は言いたい事だけ告げて電話を切る。
「誰から?」
「藍架、仕事の手伝いについての話だけど…単刀直入な事だけ言って切りやがった」
好奇心?での愛梨からの質問に適当な感じでごまかしながら返し、ハンバーグの残りを食う。
…つーか俺が異国に滞在してる間は式部が監視役っぽい事を言ってたから、別に組み合わせがどうこうの報告は要らないんだけどな。
「お姉ちゃん忙しいのかな…?」
「直ぐに電話切れたから忙しいんじゃね?」
「藍架の所は最近急に人手不足になったから忙しい、って聞いたけど」
愛梨の疑問に適当に返して二個目のハンバーグを食べてると母さんが会話に参加して来た。
…一応母さんは藍架が忍者として危ない仕事をしてるって分かってる側だけど…
その言葉で俺に対して特に思う所が無いって事は、藍架が俺が犯人だっつーのを言わなかったのか。
意図して隠したのか、言う必要が無かったのか分からんけど…多分後者だろうよ。
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