03
「…お兄ちゃーん?」
金属防具一式をあれこれ調整してるとドアがノックされ、愛梨の声が聞こえてきた。
「おーう、なんだー?」
金属防具一式を小箱の中に仕舞いながら外を見るといつの間にか日が沈み始めた夕方になっている。
…どうやら学校が終わって帰宅してたのか…時間が経つのは早ぇぜ。
「…入るよ?」
「おう、なんか用か?」
「あ、うん…今回はいつまで居るのかなー?って」
愛梨がドアを少し開けて確認してくるので了承して用件を問うと可愛く首を傾げて聞いてきた。
「今回はいつもよりはちょっと長いかね、藍架の仕事の手伝いがあるから二週間ぐらいは居ると思う」
「そうなんだ、じゃあ休日とか一緒に遊びにいけるの?」
「…おう、どうせ仕事の手伝いは夜からだからな…バリバリいける」
『柄(仮)』や金属防具一式の調整があるから断ろうか、と一瞬考えてしまったが…
愛梨の事を考えると調整なんて後回しでも全然問題無いのでとりあえずオッケーする。
…俺は愛梨に会いたいと思えばいつでも会えるけど、愛梨からしたら俺といつでも会えるって思ってるワケじゃないからな…
愛梨が電話さえしてくれれば忙しかったり立て込んでない限りは直ぐにでも帰って来れるが、忍者の事を考えると…
やっぱり面倒なのでなるべくなら異国には帰って来たくないワケで。
今はまだ忍者の数が戻ってないし、俺が妖怪退治してるから前みたく家には押し寄せて来てないけども、ソレも時間の問題だ。
忍者候補生達を忍者にすれば数の問題は解消されてしまう。
すると朝や昼だと前みたいに家にまで忍者が押し寄せてくる可能性も…
しかも下手したらまた愛梨が人質に取られてしまうかもしれない。
…ああ、そういやソレで思い出した。
式卜のお嬢さんがこの前のアレを知った結果、ぶち切れして…
式使のお姉さんが止めたにも関わらず上層部に直接乗り込んで文句を言ったんだと。
式部も本当は止める立場なのに、良いぞもっとやれ状態で式卜のお嬢さんに加勢してたとか。
…流石にそんな事があったから愛梨に手を出すとは思えない…けど…
忍者の中にはそんなの知るか、でやりそうな奴も居るだろうし…
式神一族の圧力がどこまで通用するかも分からないからな…
「…お兄ちゃん?」
「ん?…ああ、なんか言ってた?ごめん、ちょっと考えごとしてて聞いてなかったわ」
俺が内心愛梨の心配をしてるとその本人が目の前で首を傾げて聞いて来たので、とりあえず考えに浸って聞き逃した事を謝る。
「あ、ううん…別に大した事じゃないから…じゃ、私はリビング行くね」
…結局愛梨は何しに来たのか分からないまま部屋から出て行く。
…え、何しに来たの?
俺がどれくらいの期間実家に居るか確認に来ただけ?
…なんかあるんならともかく、何もないならそんなんどうでも良さげな事になるんじゃね?
疑問に思いつつもそろそろ夕飯の時間っぽいので片付けをして一旦リビングへと向かう。
…今日は何を作ろうかなー…確か冷蔵庫にひき肉が入ってたから…
ハンバーグ、ピーマンの肉詰め、三色丼、スコッチエッグ、つくね…
おっと麻婆豆腐とか麻婆茄子も良いかもな。
「お」
「あ、下りて来た」
夕飯のメニューを考えながらリビングに入ると…
不思議な事に母さんと愛梨がリビングのテーブルの上にボウルを置き、ハンバーグのタネを作っていた。
…キッチンで作れば良いものを…なんでリビングで?
しかも愛梨も一緒に作ってんのかよ。
「程人、今から仕事?」
「いや、もう少ししてからだな」
「じゃあ夕飯食べてから行けるね!」
母さんの質問に答えながらソファに座ると何故か愛梨が嬉しそうに言う。
「おー、そういや愛梨の手作りなんて初めてのような気がするんだが」
「美味しくなかったらゴメンね」
「いや…たとえ不味くても食うよ、料理は愛情っつーからな」
俺の適当な返しに愛梨が可愛い事を言ってきたので格好つけるために完食宣言をする。
流石にどんなに不味くてもリザリーが作るロシアン料理よかマシだろ。
…ちゃんとした『食材』を使って作るんであれば。
料理が壊滅的に下手な部類に入ってる奴らは何故か知らんが、食材以外の物を入れたがるからな…マジで。
色付けるためにケチャップとかマヨネーズとかの調味料じゃなく、絵の具とか頭イカれてんじゃねーの?
なんなら最近でも米や野菜を洗う時に洗剤使ったりする奴が居るってんだから…もう、ね…
頼むから口に入れても大丈夫か否かを料理する前に、先ず始めに考えてくれよ…と。
カレーとか麻婆豆腐とかにトロミ付けるって小麦粉や水溶き片栗粉とかじゃなく、液体のりを入れてるのを見たら殺意さえ湧くわ。
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