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「…あー、じゃあ警視庁?警察庁?とかいう上の人に確認を取ってみて」
「…ああ言ってますけど、どうします?」
「抵抗の意思は無さそうだし、一応確認を取ってみよう…念のためお前は増援の要請を」
「分かりました」
俺の提案に警官の一人がどこかへ歩いて行き、残りの一人の警官は拳銃を構えたまま無線機を取る。
…あーあ、コレ…逃げたら面倒なやつだから確認が取れるまでこの場で待機しとかないといけないパターンのやつか…
面倒ではあるが、こうしてちゃんと治安が守られてると思えば…うん。
仕方のないことかもしれないな。
俺が自転車に座って待ってるとサイレンの音が聞こえ、パトカーが三台に増えた。
しかも俺を囲むように乗って来た車の前後に停まる。
…何も悪い事なんてしてねぇのに注目を集めるハメになるとは…
ってかこれ、周りから見たら俺が犯罪者のように見えてる事にならねぇ?
「銃刀法違反をしてる、という男はこいつか?」
「はい、この近辺で銃の発砲音が聞こえた…との通報があり、様子を見に来た所この男が刀を所持してました」
拳銃を構えてる警官は応援にかけつけた警察官の質問に周りの同僚達?にも聞こえるように説明する。
「それで、抵抗する素振りが無いのになぜ逮捕しない?」
「それが…帯刀の許可は取ってあるから確認しろ、と言われまして…」
「…なるほど、確認中というワケか…」
「任意での同行なら拒否するぜ?許可を持ってるのに違反扱いは納得出来ねぇからな」
状況説明は俺にも当然聞こえてるので、次の展開を予想して先手を打って釘を刺す。
…本当は許可なんて取ってねぇけど…まあ忍者なんて単語を使えばなんとかなるだろ。
警察みたいに常に手帳とかを持ち歩いてるワケじゃないし…
そもそも忍者なんて単語を使ってるのは警察の上の方とか、防衛担当の上の方…
あとは忍者か裏社会の奴らだけだからな。
警察にも知れ渡ってないぐらいの知名度だからそこそこの秘密組織なんだろうよ。
…って、アレ…?
良く考えたらおかしくね?
現れるのが夜だけとはいえ、この国での妖怪の認知度は高いハズだ。
実際に襲われでもしない限りは妖怪の存在なんて都市伝説や噂程度の信ぴょう性しかないんだろうけど…
それでも警官は治安を守るための組織なんだから、妖怪退治専門職の忍者は知ってて当然じゃねぇの?
防衛庁だか防衛省直轄の特殊部隊…特務部隊だっけ?
…まあどっちでもいいや。
そんなアレなのに、警察関係に知られてないってどういうこと?
一般人に知られてないならまだしも…警察関係とは治安維持で協力体制を取る時もあるっぽそうだから、周知徹底させた方がいいと思うんだが。
…なんやそこらへん組織的な大人の事情が絡んでるのか、ちぐはぐな感じがするぜ。
説明してる俺でも異国の状況に違和感を持つぐらいだし。
…でもその中で生活してると違和感なく当たり前に思えるのか?
俺は外部の経験もあるから、違和感に感じる系…?
実はコレが当たり前で実際はなんの不思議も無い感じ…?
「…確認が取れた、確かに許可は得ているらしい…謝罪をしてから速やかにその場から解散せよ、との指示が」
「…本当に許可を取ってたのかよ…」
やる事もなく自転車に座ったまま色々考えてると、連絡を取っていた警官が戻ってきてその内容を告げた。
「それより、謝罪してから速やかに解散…とは?」
「…彼の所属している組織との揉め事は大変面倒な事態に結びつくため、絶対に摩擦を生じさせるな…と署長からの命令です」
この中では一番偉いんであろう警官の疑問に、聞かれた警官は苦虫を噛み潰したような顔で説明する。
「…我々の勘違いで手間を取らせてしまい、誠に申し訳ありません…次からはこのようなミスが無いようにしっかりと…」
「ああ、うん…分かったから解散」
一番偉そうな警官が俺に頭を下げて長々と謝罪してきたので適当に手を振って指示した。
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