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「痛たた…もう少しスピードを落として重心を後ろにして止まるべきだったな…」
「ったく、俺を巻き込もうとすんなや」
「すまん…つい調子に乗ってしまった…」
反省点を呟きながら立ち上がるエルーに文句を言うと謝りながら金属を脛当てを外す。
「…コレ、一応魔力の量によっては空も飛べるハズ」
「マジか!!?」
俺が渡された金属の脛当てを再度着けながら理論上での話をすると食い気味に反応してくる。
「ソレを今から試すんだよ…スラスター、オン…」
俺は魔石の魔力を使い詠唱破棄で魔術を発動させ、先ずは前ではなく後ろに移動するイメージをした。
「…おお?」
まるでダンスのようにスーっと前を向いたまま後ろに進む事に成功したので、今度は横向きに進んでみる事に。
……なるほどなるほど。
一応理論上は360°全方位に進める計算だったが、こういう風に進むとは…
「エルー!見ろ!ムーンウォーク!」
「!おお!」
前に歩くように脚を動かしつつも魔術の力で後ろに進む。
ダンスの難易度高い技が思いつきで簡単に高クオリティで出来ると言うのは凄い!
「更に前に歩きながら右に左に自由自在!」
「…まさに無重力での歩きだな…」
俺は調子に乗って前に歩きながらスッスッ…と魔術の力で右に左に進んで行く。
凄ぇ面白ぇぜ!ナニコレ、楽し過ぎるだろ。
「…スラスターオフ…よし、ある程度楽しんだところで…行くぞ…!」
「…ついにか…!」
10分ほどふざけて本来の目的を思い出し、唾を飲み込んでそう告げるとエルーも唾を飲み込んで拳を握る。
「…ふー…スラスター、オン!いざ彼方へ!」
「…おお!浮いた!浮いている!」
精神を集中させた後に魔石の魔力を使った詠唱破棄で魔術を発動させ前ではなく、上に上がるイメージをすると金属の脛当てはドンドン浮いて行った。
「コレもう飛んでるで良いんじゃね!?」
「否っ!…いや!まだ浮いてるだけだ!」
地面から5mほど浮いた場所でエルーを見下げて確認を取ると見上げた状態で力強く否定される。
「…行くか!」
「おう!」
ビシッと力強く親指を立ててエルーに向けると、同じようにビシッと力強く親指を立てて俺に向ける。
「いざ!フラーイ!!…うおっ!?」
浮いた状態から前に進むと予想以上の不安定さにバランスを崩し、そのまま半回転して頭から地面に落っこちた。
「げぶっ!!」
魔術の発動を止めてなかったので受け身が取れず…
5mほどの高さから落ちた俺はモロに頭を地面に打ち付ける。
「大丈夫か!?」
「…あ、ああ…普通の人間なら死ぬぞ、マジで」
ドシャ、グキッ!と頭を強打した上に首の骨を折り、肩から倒れ鎖骨も折れて、肋骨の方もヒビ。
…エルーがやるなら下にマットとか敷かないと死ぬな、コレ。
想像以上にヤバいので、駆け寄ってきたエルーに上から落ちた時のダメージの大きさを伝えた。
「…お前でもバランスを崩すとは…」
「バランスボールに乗ったまま氷の上を滑ってる感覚に近い」
不安定な足場に立ってる状態で、その足場が前に動いた時…
バランス力や体幹力に自信を持っている人達の中で果たして何人耐えられるのか…
「バランスボールに乗ってスケートか…その例だけでかなりの不安定さが窺えるな」
「今のはまだ脚のパーツだけだからな…腕や銅のパーツでバランスを調整できるようにすれば飛行は可能だと思う」
「なんだと!?ソレは本当なのか!?」
不安そうに呟いたエルーに説明すると驚いたように聞いてくる。
「コレを見ろ!」
「そ、ソレはさっきの…!」
地面に落ちてる金属の小手を拾って見せると思い出したかのように叫ぶ。
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