13
「なっ…!!?」
「うおっ…!?」
スーっと4mほど進んだ所で止まり、ソレを見ていたエルーは驚愕の声を上げ…
慣性の法則的なアレで俺は上半身が前のめりになりまた驚いて悲鳴に近い声が出る。
ほんの少ししか魔力を使ってないにも関わらずこんなに進むんかい…
まるで自動で進むスケートだな…超人的なバランス感覚と体幹を持つ俺じゃないと絶対に、進んだ時と止まった時に転んでるって。
だが今ので大体分かったぞ!
「スラスター、オン…おおっ…!」
「…は、はは…」
ちょっと身構えて詠唱破棄で魔術を発動させると、今度はブーツような脛当てが動いた際にちゃんとバランスが取れた。
そのままスケートのようにスイスイ乗りこなしてる俺を見て、エルーが信じられないモノを見てるかのような乾いた笑いを浮かべる。
「エルー見てみ!コレ、凄くね!?超楽しい!」
魔石の魔力を使いながらスピードを上げてそこいらを猛スピードで移動しながら楽しさアピールをした。
「…そ、ソレはなんだ?」
「スラスター、オフ…っと」
完全に使い熟した俺は愕然としながら呟くエルーの前で止まる。
「…なあ、ソレはなんなんだ!?」
「コレ?ちょっと魔石を埋め込んで、風魔術使って推進するようにしたら凄い機動力になるんじゃないかなー?と思って作ったヤツ」
急かすようなエルーの質問にどこ吹く風で答えた。
「風魔術を推進力に変換するだと!?」
「ん、でもちょっと浮いてるから安定力がイマイチ…自分でバランスを取る必要があるけど、超楽しい」
「ちょっと待て!メモする…というか俺にも是非やらせてくれ!」
尚も驚くエルーに欠点部分を報告するとどこからかメモを取り出し、片手で俺の肩を掴む。
「いいぞ、俺以外の生のデータが欲しいからな」
「よっしゃ!」
俺の了承に力強くガッツポーズしたエルーは急いでメモに何かを書き始める。
「ほいよ…魔力を込めてスラスターオンで進み、スラスターオフで止まる」
後は魔力の供給が止まったら止まる…と、 外した金属の脛当てを渡しながら説明した。
「スラスターオン、オフ…か」
「動き始めと止まる時、気をつけろよ…引っ張られるぞ」
金属の脛当てを着けながら呟くエルーに無駄だと思いながらも一応体験した注意すべき点を告げる。
「…ああ…スラスター、オン!…うおっ!!?」
「…あーあ、やっぱりな」
人がせっかく注意したにも関わらず…
その甲斐虚しくエルーは金属の脛当てが動いた直後に後ろに背中から倒れ、5mほど引き摺られた。
…にしても倒れながらでも進むんだな…直線ではないけれど。
「くっ…!まさかここまでとは…!なんの!スラスター、オン!…ぬぐっ…!」
エルーは立ち上がると悔しそうに呟き、気合いを入れて詠唱破棄で魔術を発動させる。
流石に二回目は無様に転ぶ事もなく、なんとかバランスを保ったまま進んだ。
「おっ、上手く行った」
「…お、おお…!おおおお!!なんだコレ!超楽しいぞ!自分の思い通りスイスイ動くし、ドンドン進む!」
速度を上げてビュンビュン平原を駆けながらエルーが叫ぶ。
…ふむ、魔力とバランス感覚があれば誰にでも扱えそうだな…
…まあ当然実用化させる気は皆無だけども。
「…そろそろ戻れー!」
「…分かった…スラスター、オフ…ぐわっ!!」
「危ねっ!」
調子乗って遊んでるエルーにそう告げると、調子に乗って俺の前で止まろうとし…
スピード出し過ぎからの急停止による慣性の法則的なアレで俺目掛けて突っ込んで来たが、なんとか直前でギリギリ回避。
するとエルーの上半身が地面に突っ込む形で盛大な前転のように地面を転がり出した。
…バカだな…止まる時に気をつけろって言ったのに…
…コレは止まる時の方がよりバランス感覚が重要となりそうだ。
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