15
「そう、コレを装着すると脚だけではなく…両手両足で魔術によるバランスコントロールが出来るのだ!!」
「な、なんだってー!」
「…とりあえず落ちたらマジで危ないから最初は俺が試すわ」
半端ない盛り上がりからの現実を見てクールダウンし、俺は金属の小手を着けた。
「…俺にも貸してくれ!」
「浮いても最低限の安全が確保出来ると確認できたらな」
…流石にさっきみたいに受け身も取れずに頭から地面に真っ逆さま…だと、耐久性が人間並のエルーには危ない。
こんな良く分からん状況、テンションで死なれたら困るし。
「…ならばせめて2mで良いから浮かせてくれ!」
「…それぐらいなら大丈夫か…スラスター、オン」
エルーの提案で危険度は高度の問題である事を思い出せたので了承し、魔石の魔力を使い詠唱破棄で魔術を発動させる。
そして、いきなり浮くのもアレなので先ずは前に進む。
…おお、コレは…進む時に両手を前に引っ張られてるような感じだから、走り始めに後ろに倒れる危険性が減ってるんじゃね?
少なくともさっきの脚だけの時よか遥かに安定感が増しているぞ。
例えるなら二輪の自転車が四輪のバイク型の自転車になった感じ。
「…どうだ?」
「…スラスターオフ…地上を滑走する分には安定性が遥かに違う」
止まる時も手を後ろから引っ張られてる感覚だから前のめりに転ぶ危険性も下がってんなぁ。
「そうか…!では、ついに!」
「ついに!スラスター、オン!」
エルーが嬉しそうに力強くビシッと親指を立てたので俺もビシッと力強く親指を立てた。
そして魔石の魔力を使い詠唱破棄で魔術を発動させ…いざ!
俺はさっきと同じく5mの高度まで上昇してから一旦止まる。
…うーむ、さっきよりはバランスは取りやすい…が…
手と脚の位置がまた微妙だ…
両脚はそのままの状態で右手を背中側…に。
左手は目の前の腹側に。
…身体をちょっと捻るような形でバランスを取らないと…
「行くぞ!」
「おう!」
気合いを入れた合図をして前へと進む。
「…うおっ…と、と…」
「おお!進んでる…!進んでるぞ!」
俺はエルーの興奮した応援を受け、かなり絶妙なバランスを取りながら速度は緩やかに進んで行く。
…飛行する場合は胴の部分が無いと速く自在に飛び回るのは厳しいぞ…
特に背中の部分。
良く漫画とかでブースターを付けてるが…なるほど。
必要なのは理論上理解していたけど、実際体験すると背中側に必要不可欠なのが良く分かった。
手前側だと四つん這い的な感じになれば手でバランスを取れるが、背中側だとそうはいかんもんな。
…エクソシストになってしまう。
…エクソシスト?
「エルー!見ろ!エクソシストー!」
「ちょっ…!ははは!うまいうまい!」
ちょうど良いギャグを思いついた!と言わんばかりに、俺は空中でブリッジして逆四つん這いになりながらエルーに向かって斜めに下りて行く。
…意外と逆四つん這いでも結構安定しており落ちるような事は無かった。
俺の階段を下りて行くシーンの真似がツボったのかエルーは腹を抱えて爆笑する。
「…いよっと…」
そのまま地面に下りて金属の小手だけ動かし体勢を元に戻した。
「はー、はー…で、どうだった?」
「無茶しなければ多少の飛行は可能」
小手さえ自由に動かせるようになれば落ちても受け身は取りやすそうだし…と、息を整えながら聞いてきたエルーに説明する。
「俺でも出来そうか?」
「…一応な、ほらよ」
ワクワクした様子で催促するような問いに俺は及第点といった感じで返し、金属の小手や金属の脛当てを外して直ぐに渡す。
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