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ピンと張ってる線なら斬れてもゆらゆら動かれると斬れるかどうか微妙…



「くそっ!ちょこまかと…!おら!」


「…お?」



打撃を諦めたのかモヒカンはちょっと後ろに下がって鋼線を振るう。



動きが直線的過ぎるので普通に無名でガードしたが…



無名に当たった時の衝撃が普通のソレじゃない。



まるで先端に重りが付いている鞭をガードしたかのような衝撃だ…



…うわお、この衝撃ならただ振るって当てるだけで腕とか脚とかを切断出来てもおかしくねぇな。



「おら!おら!おら!」


「…すっごいなぁ…君、見かけによらず力あるんだね」



コレも人体実験のおかげかな?と必死に鋼線を振るうモヒカンに、俺は無名でガードしながら笑って問いかける。



…流石に人体実験でもされてないとこんなヤツがこんなに強いハズがない。



「っ!?てめぇ…!何者だ!」


「私は私、ソレ以上でも以下でも…何者でも無いよ」



攻撃が止んで問いかけられたので無名を構えながらお決まりのセリフを言う。



…にしてもユニオン以外でも人体実験でここまでの強さを生み出せるとは…



後進国でも先進国でも科学のレベルは上がってきてるなぁ…ソレが良い事か悪い事かは置いといて。



まあ苦しい思いをしたであろう事は確かだろうけど。



ユニオンだってそう簡単に楽に強くはさせきれてないんだから。



寝て起きたら強くなってるなんてみんなの夢だし。



「…まあいい…てめえが何者だろうと関係無ぇ…ココで俺に殺されるんだからな!」


「…寝言は寝て言うから寝言なんだよ?…起きながらにして言うなんて珍しい、な!」



なにやらモヒカンが鋼線を増やしたようなので俺は煽るように言いながらダッシュで距離を詰めた。



「…なに!?くそっ…!」



俺が距離を詰めたのが予想外だったのかモヒカンは慌てて鋼線を振るう。



が、遅い。



「とりゃ」



やる気の無い声と共に俺は急ブレーキをかけて鋼線のギリギリ範囲外で止まり、上半身の反動を活かして無名をモヒカンに向かって投げる。



「ぐっ…!」



鋼線で弾くには質量というか力が足りなかったらしく無名はサクーっとモヒカンの腹に貫通した。



「バイバイ」



俺は直ぐさま無名の柄を掴むとお別れの挨拶をして上に振り上げ、上半身を真っ二つにする。



…鋼線か…かなり珍しい武器だけど流石に飛び道具には対応できまいて。



上半身だけ分かれた状態で倒れてるモヒカンに心の中で十字を切りながら女の子を担ぎ、男を手に別の所へと向かった。



…死体は後から回収すれば良いかね。



どうせ誰も手ぇ出さないだろうし。



次は誰かなー?どこかなー?っていうか残り何人居るのかなー?



「痛い…!いやっ!いやっ…!やめっ…!」



村の中を適当に歩いてると女の人の悲鳴が聞こえてくる。



「…うるさいやつだ、死にたくなければ黙れ」


「ひっ…!…っぐっ…!ぅ…!」



おそらく特殊部隊が居るであろうと予想して悲鳴の下へと向かうと…



見るからに傲慢そうなチャラチャラした男が美人なお姉さんを力づくで組み敷いて無理やりヤっている最中っていう。



しかも男は血塗れだし、ナイフの刃をお姉さんの首に当てて脅しているとか…



…かなりのゲスだなぁ……うん?



周りに転がってるのって良く見たら全部容姿レベルが高くて若い女じゃね?



…よし、殺そ。



決断して直ぐに女の子と男を地面に下ろし男に近づく。



…幸いな事に俺は男の後ろ側から来てたので気づかれずに接近できた。



先ずはそのナイフを持ってる左腕だな。



「ぐっ…!?」



俺は無名を静かに抜いて無警戒の男の左腕を斬る。



「振り向くと殺す」



男が振り向くよりも早く刃を首に当てながらそう告げると動きが止まった。



んじゃま、右腕いきますか。



「ぐあっ!!」



刃を首から離すと直ぐに右腕を肩の方から斬り落とす。



「…鬼火」



出血多量で死なれたら困るので、魔石を使った詠唱破棄での炎魔術で男の傷口を焼いて塞いだ。



「ぐ…あ…!」


「さあ、今度は脚の方に行こうか」



そして痛みに悶える男の髪を掴んで引っ張り上げ後ろから耳元で囁く。



…おっと、脚に行く前に…



「うっ…!ぐぁ…!!」



男の髪を掴んだまま後ろに引っ張って美人なお姉さんから引き剥がし、股関節よりちょい下の右脚を斬る。

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