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本来『蕎麦』っつーのはそば粉を使うからそばなんだぜ?
そして小麦粉を使った麺はラーメンの括りに入るハズ。
なのにその離れ島はラーメンをそばと言ってるっつー意味不明さ。
離れ島だから大陸とは考えが違うのかね?
…まあ俺はその沖縄とか言う離れ島に実際は行った事が無いから知るのは情報のみ。
もしかしたら俺らがそう呼んでるだけで離れ島の人達はそのそばをラーメンと言っているかもしれん。
情報が間違って伝わるなんて良くある事だし。
元中国の四川料理しかり、元インドのカリーしかり、異国の寿司しかり。
別の所に伝わる頃にはもはや別物の料理になってるなんてのが普通だったりするからね。
生産大陸で見た『スシ』なんてリザリー達と初めて行った時は、こんなん寿司じゃねーよ!ってキレたわ。
…でも異国の料理がこの国に伝わってたってのは超珍しかったではあるが。
あの後リザリー達にちゃんとしたシースーをマグロとかサーモンの切り身で作ってやったのは良い思い出だ…
「…程人さん?」
「ん?あ、ごめん…聞いてなかった」
何やら俺が考えに耽っている間にショコラとクレインがなにかを喋っていたらしい。
会話を全く聞いてなかった俺を不思議に思ったのか首を傾げて尋ねてきたクレインに適当に謝る。
「なに考えてたの?」
「いや…異国でラーメンをそばと呼ぶ地域があるのは何故だろうな?と」
「「そば?」」
ショコラの質問にさっきの考えをそのまま返すとクレインと二人してハモりながら不思議そうに聞き返す。
「異国の麺料理の一種だよ、そば粉っつーソバの種を挽いた粉で作るやつ」
「…へー、そんなのがあるんだ…」
「いやいや、養成学校時代に何度か作ってやっただろうが」
俺の説明に初めて聞いた…と言わんばかりのショコラの反応にツッコむようにそう告げた。
…異国に帰郷した時にお土産として持って行って振る舞ってやったのに…忘れやがったんかい!
「…そうだっけ?」
「あの冷たい出汁に浸けて食べるざるそばと温かいスープに入ってる灰色の麺だよ」
「灰色………あっ!」
記憶に無い様子で首を傾げたショコラに俺が呆れたように説明すると、少し考えて思い出したのか声を上げる。
「思い出したか?」
「ん、そう言えば異国にしか無いとかいう灰色の麺のやつがあったね…」
アレ美味しかったなぁ…とショコラは懐かしいような感じで食べたそうに呟く。
「灰色の麺…ですか?」
「うん、ラーメンやパスタのように細いんだけど食感や味がまた独特で…」
「うどんとは違った食感だよなー、うどんの方も美味いけど」
俺は不思議そうに聞いてきたクレインに説明するショコラの言葉に賛同するように補足?的な事を追加する。
「…うどん?」
「…ああ、クレインに異国の麺料理の話をしても知らねぇんだよな…すまん」
またしても俺の言葉の中の単語に不思議そうな顔で反応したクレインに自己完結で納得して軽く謝った。
「…ねえ、うどんって確か小麦粉から作るやつだったよね?」
「あ?…あー…そうだな、材料は強力や薄力だから小麦粉で合ってる」
「じゃあうどんにしよ!」
ショコラの疑問に思い出すように答えると何故か昼飯の選択肢が変わる。
「えー?直ぐに出来るパスタで良くね?」
「時間かかるの?」
「…まあ、生地を寝かせるのに一、二時間ぐらいは」
「…ちょうどお昼時間じゃん!いけるいける」
俺は嫌そうに返すがショコラはポケットからケータイを取り出し、時間を見て強引に話を進めてきた。
「いけるいけるって…」
「ナターシャちゃんもうどんとかいうのを食べてみたいよねー?」
「はい!是非食べてみたいです!」
呆れたように呟いた俺とは対照的にクレインはキラキラした笑顔で元気よく頷く。
…え、ええー…結局パスタからうどんになった系?
…いや、元々小麦粉から麺を作ろうと思ってたからソレは良いとして…
うどんにしても温かい普通のなのか、冷やした冷麺なのか、それとも焼きうどんなのか…どの種類を作るんだ?
「温かいスープ系か?冷製スープ系か?野菜とかと一緒に炒めた焼きうどん系か?何を作んだよ」
「え?うどんってそんなに種類があるの?」
とりあえず作る料理の種類を聞いてみるとキョトンとした顔で首を傾げられるっていう。
「種類っつーか…元々スープの具みたいなモンだし」
「そなの?」
「へー…麺がスープの具材なんて珍しいですね」
…あれ?そういやパスタとかは炒める系が多いけど、汁物に入ってるパスタ料理って見た事無いような…
…そもそも異国以外で麺を汁の中に入れるのってあんまり見ない…
ショコラの疑問とクレインの不思議そうな呟きに俺も内心新たな疑問を考える。
「…まあそういう風土だったんだろうよ…良く分からんが」
こういう食の歴史の不思議を聞かれても、疑問とかを自分で思いついても…あまり関心や知識が無いので答えられん。
つーワケで俺はちゃんと答える気も誤魔化す気もないので適当に返した。
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