25
「…あー、おかえりー」
「おう、今帰ったぞ」
「ただいまです」
研究所に戻ると入口から入って直ぐの所でショコラに遭遇。
適当な感じで出迎えの言葉を言われたので俺も適当な感じで返す。
「…ご飯にする?お風呂にする?それとも…私?」
「チェンジで」
ショコラが定番過ぎるボケをぶっ込んで来たので俺もジェスチャーと共にボケを被せる。
「なんだとー!」
「お客は神様だろ?チェンジで」
「てか店じゃないし!」
若干怒ったようなショコラに更にボケを続けると普通にツッコミを入れられた。
「…飯か風呂か女か、って選択肢を出されたら誰だって店と勘違いすると思わないか?なあ?」
「へ?」
俺はショコラを弄るように疑問系で言い、クレインに尋ねると話を聞いてなかったかのような反応をされる。
「いや、その子に聞いても分からないでしょ」
「…ソレもそうか」
「え?…え?」
ショコラがさらなるツッコミをして俺が納得したように呟くとクレインは不思議そうに右に左に頭を傾げた。
「とりあえずご飯作ろうと思うけど、何か食べたいのある?」
「なんでもいいよ」
「えー?なんでも良いが一番困るんだけど」
ショコラの話題を変えての提案に適当に返すと若干イラっときたような感じでそう言う。
「…ん~…んじゃあピロシキ」
「えー…ピロシキは時間的に無理」
「…じゃあ春巻」
「…春巻も皮作るのが面倒だから嫌」
ちょっと考えてふと思いついた食べたい料理を言うも何故か却下される。
「じゃあ何なら作れんだよ?そもそも時間とか面倒とか食材がー…とか言うんなら『何食べたい?』じゃなくて、『AとBどっちが食べたい?』の選択系にした方が良くね?」
「おお、確かに!」
俺が呆れたように言うとショコラは感心したように手をポンと叩いた。
「…つーかそんなん聞かなくても適当なモンを作りゃあ良いんじゃね?誰も文句言わねぇじゃん」
逆に文句言うんなら自分で作るか買うかして用意しろよ、ってなるし。
「…そりゃそうだけどさ…何作ろうか迷うじゃん?考えるのも面倒だし」
「正直聞かれる側からしたら『何食べたい?』が一番困るけどな」
買い物行く前ならともかく、食事を作る前ならほぼ作れる物が確定してるんだからさ…
その状態で作れない物を注文されてもお互い困るだけだろ。
作る方は材料足りないだの作り方が分からないだのでイライラして、頼む方は聞かれたから食べたいのを答えたのに却下されてイライラする。
そしてそのストレスが積もると喧嘩に発展。
…だから、やっぱり聞く時は冷蔵庫にある材料で作れる料理を提示した方がいいね。
あとは『何食べたい?』って聞かれた時に『何が作れる?』って聞き返すとか。
そんなスマートなやりとりをするとストレスフリーになってイライラもしなくなるかも。
「ん~…そだね、確かにそうかも」
「…よし、今回は俺が作ってやろう…何食いたい?」
少し考えるようにして賛同したショコラに俺はネタとして尋ねた。
「なんでもいいよ?」
「…おい」
「あはは!ねえ、ナターシャちゃんは何が食べたい?」
ショコラの可愛いドヤ顔での意趣返しに俺が呆れながらため息混じりに返すと、笑ってクレインに話題を振る。
「え!?…えーっと……カルボナーラとかどうです?」
「カルボナーラか…いいね」
「んじゃ、ソレで」
突然の無茶振りに驚きながらも案を出すとショコラが賛成したのでソレに決定。
どうせハルトやエリアは文句言わないだろうし。
…つーかカルボナーラを食べなかったら作った分はどうすんだ?
夕飯か明日の飯に回すのか?……まあいいや。
「あ、麺はどうする?インスタントのがあるけど」
「あの茹でるだけの奴か…小麦粉から作ろうかと思ったが楽出来んならソレに越した事はねぇな」
「え!?パスタを小麦粉から作ってるんですか!? 」
ショコラの提案に少し考えてそう返すとクレインが驚いたように聞いてきた。
「インスタントが無い場合は」
小麦粉とかの調味料系なら大体はどこの研究所でも常備されてるからな…
支那そばみたいな麺も作れるワケだから麺類の料理で困る事は無い。
…ってか支那そばでずっと前から疑問に思ってたんだが…
異国の九州の離れ島では『支那そば』の事を『沖縄そば』とか言うらしいけど…
支那そばって元々は中華合衆国…昔で言う中国って所から伝わった麺料理のラーメンを和名にしただけなのに、なんで『そば』の括りなんだろう?
俺が育った所では蕎麦ってのはそば粉で作った麺を使った料理で、小麦粉で作った麺の料理はラーメンの括りだったのに。
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