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「…で、結局はなんの用だったんだ?」



一通り積もる話を消化させたところで俺が聞く。



「おっとそうだった…シェリー隊長から頼まれた」


「…姉の方のクレインから?」



今やクレインっつったらリザリー、シェリー、ナターシャと多いからな…



子供の方のクレインと姉の方のクレインとで分けないとごっちゃになるよ。



リザリーの場合は妹の方のクレインになるけど。



「…姉の方?…ああ、妹がいるから…その妹が君を探してるらしい」



男性は俺の言葉に不思議そうに首を傾げるも直ぐに納得したように告げる。



「…ソレはマジなやつか?」


「マジなやつだ、だから元メンバーを含めた三人で捜索にあたっていた」



まあ君を見つけた時点で他の二人は別の仕事に移ったけども…と男性は続けた。



…あの元ドッペルゲンガーが三人がかりって…気合いが入ってんのか俺を殺そうとしてんのか…



「つー事はなにか?今ココに向かってる系?」



…もしかして昔話で中途半端に盛り上げたのって足止めさせるため?



「いや、とりあえず居場所を探して欲しい…と」


「…そうか」



いやー、良かった…アイツが来てるとかなら今すぐにでも逃げ出そうと思った…が…あ。



待てよ…実は来ないとか言いがち、俺を逃がさないために本当の事を言ってない可能性もあるわけだ。



「公園に住み着いている、という情報だったんだが…まさか道中で見つけるとは」


「…本当にアイツは来ないんだな?」



俺は男性の言葉を無視してちゃんとした確認を取る事に。



「…今は生産大陸に居るらしい、流石に半日で来るのは難しくないか?」


「それもそうか…」



飛行機ならともかく、船なら高速艇でも半日は厳しいかもしれん。



…まあでもコレでリザリー達がココに来ないというのは保証されたも同然だろ。



「どうやらシェリー隊長が伝言を預かってるらしい…出来れば連れて来てほしい、と」


「…伝言?」


「ああ、プライベートに関わる事だからと教えてはくれなかった」



…プライベートねぇ……はっ!もしかして…!



俺にナターシャの父親になってほしい。とか言うんじゃないのか!?



ナタ…もといクレインは俺を好いてるし、あり得ない事では無い…!



そして俺に結婚してくれ、とかのプロポーズを…?



…つー事はリザリーが義妹になる…?



……上手くいけば姉妹丼や母娘丼が楽しめる…!



ふっふっふ…!このチャンス、逃さずおくべきか!



「…分かった、行こう」


「おお?なんかやけにすんなりだな…」



俺がゲスい妄想をしながらも、外面に全く出さずにポーカーフェースで頷くと男性は意外そうに呟く。



「伝言、とやらが気になるからな」


「…そうか、まあ俺としては仕事がスムーズに進むから助かる」



内面の考えを微塵も外に出さずにクールに言うと男性は嬉しそうに立ち上がる。



「…で、どこに行くんだ?」



アパート?のような建物の一室から出た俺は階段を降りてる男性に聞いた。



「ココから馬車で30分ぐらいの所にある基地」


「…喫茶店とかじゃダメなのか?」



30分も狭い馬車の中で野郎と二人っきりとか…



考えただけで気が滅入るわ。



「さあ?内密な話でもするのでは?」



…内密か!コレはますます逆プロポーズの線が濃くなって来たな!



男性の返事に内心テンションが上がりつつもそこらへんで拾った馬車に乗り込む。



そして30分後。



「着いたぞ」


「…やっとかよ…」



野郎との二人きりで精神的に疲れながら馬車を降りる。



そして待ちうけているであろう逆プロポーズを想像し、ウキウキしながら男性の後を着いて行く形で基地内へと入る。



「…失礼します」



基地内に入って5分ほど歩くと男性はある部屋の前で止まってノックし、挨拶しながら部屋に入った。



「はろはろー」


「シェリー隊長、連れて来ました」



俺が変な挨拶をしながら執務室兼応接室みたいな部屋に入ると男性が声をかける。



「…え?あ、ご苦労様」


「俺はこのまま部隊と合流して次の任務に行きますので」


「あ、はい、よろしくお願いします」



リザリーの姉は書類から目を離し俺を見て視線を移し労いの言葉をかけるも、男性は直ぐさま部屋から出て行った。



…アイツ仕事人間か、せわしなく直ぐに次の諜報活動かよ。



にしても部隊と合流って事は俺の元同僚のあの二人なんだろうなぁ…



あいつのいる部隊の人数を知らないからもしかしたら三人以上いるかもだけど。



「さて…程人君、会うのは久し振りだね?」


「ん~…まあそうっすね」


「突然呼び出して悪いんだけど話があるんだ…私と結婚してくれない?」

「はい、喜んで」



挨拶もそこそこに予想通りリザリーの姉がプロポーズして来たので俺は笑顔で即答した。

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