22
「…誰から?」
「ソレは今言うには早すぎる…別れ際にでも話そうか」
「チッ…まあいい、暇潰しがてら付き合ってやる」
「…意外と物分かりが良いんだな…さて、いざ話すとなるとどこから話したもんか…」
俺が警戒を解いてソファに座ると男性はキョトンとした感じで呟き対面のソファに座った。
「昔のメンバーは今も残ってるのか?」
「おお、じゃあソコから話そうか…率直に言うなら居ない、全員代わった」
「…だろうな」
「…何かあったのか?」
男性の話を聞いて俺が納得したように呟くと不思議そうに聞いてくる。
「いや、元上司から暗殺を頼まれた事があってな」
「…なるほど、なるほど…あの元円卓の騎士の件か…アッサリ引いたのはそういうワケが…」
あの元上司は目の前のコイツにも依頼してたのか、男性は急に真剣な顔になって頷き出した。
「…あんたの所にも来てたのか?…はっ、ドッペルゲンガーってのは相手が人間なら誰でも殺れると思っていたんだがな」
「…君が抜けた後に色々あったんだ、そもそも君が入る前から入れ替わりは激しかった」
「…入れ替わりが激しい、か…」
…その割にはあのメンバーの中での脱落者は俺が最初だったけどね。
しかも入れ替わりが激しいっつっても…
俺が入ってから抜けるまで誰一人代わらなかったがな!
「いやー、大切な物は無くなってから気づくって言うの?いっつも身代わりになってた君が居なくなったからさ…大変だったよ?」
新しく入った奴は実績云々語る割には初っ端からミスるしさー…メンバーの尻拭いや救出も大変で…
と、男性は俺の代わりとして入った新人の愚痴を話し始める。
そして10分後。
「いやー、スッキリ」
「…俺、そんな使えない奴と強制チェンジされたのかよ…」
俺の代わりとして入った将来有望とされた奴が、実は過大評価されてるだけのクズだった…という衝撃の事実。
一応スペックは俺よりも上だったらしいよ?
殺るのは俺よりも素早く高度に出来たとか…
でも!ミスる確率も高かったんだと。
…なんていうか…ほら、出来る人が持つ心の余裕と言う名の隙、的な?
いくら身体能力が高くて、技術があり、才能や能力があっても…
詰めが甘ければ全てが台無しになってしまう。
超特殊部隊の『ドッペルゲンガー』は一回限りの使い捨てや捨て駒扱いでは無い。
証拠を残さず、標的を確実に殺してから、生きて戻って来るまでが仕事、任務だ。
証拠を残さず標的を殺したからお終い。という神風特攻、片道切符的な甘い考えでは到底任務を遂行出来るとは思えないのに…
…なぜそんな意識低い系が選ばれたんだろ…?
自分を売り込むのがうまかったのか、運が良かったのか、俺がダメ過ぎたのか…
それとも全部だったり?
…確かに総合ポイントが低い奴と比べたら総合ポイントが普通の奴でも高く見えるし…
…実際は普通なのに、何故か低い奴と比べると普通の奴が高い奴に見える不思議。
「…上の決めた事だからね…司令官は終始反対してたらしいけど、権力に屈したとか」
「…あの立場でも権力に屈するのか…当時のメンバーは今何人生き残ってるんだ?」
コイツが生き残ってるんだから、俺ら二人以外全滅…って事は無いだろうよ。
「えーと…存命なのは君を含めて6人」
「…結構生き残ってんな」
「その内の二人は今も病院の中、日常生活が送れるかも怪しい状態らしい」
「…無事に生き残ってるのは9名中3名か…」
俺は『生き残ってる』とは言い難いし。
…待てよ、つー事は3名は死んだのか?
「君を含めたら4名だけど…亡くなった3名の内、2名は高齢だったから」
除隊して半年ほどで二人とも末期ガンで…と男性は続けた。
「…あと一人は?」
「…ああ、彼女は…」
俺の質問にココで初めて男性は言いづらそうに言い淀む。
「…もしかして、あの薬中女か?」
「そう、顔もスタイルも良いのに薬にハマった残念な…」
…まじかよ…アイツ、ついに死んだのか…しぶとく生き残りそうな奴だったのに…
くそっ、アイツが死ぬって分かってたんならあの時ヤっとけば良かったぜ!
顔もスタイルも性格も全てが俺のドストライクに当てはまる稀な女だったのに…!
「…そうか、最近?」
「いや、もう3年ぐらいなるかも…亡くなったのはまだ10代の後半だった記憶があるから」
「死因は?薬のやり過ぎか?」
「彼女ならいくら薬を大量に過剰摂取しようとも死なないと思うけど」
俺が問うと男性は笑いながら中々酷いような返しをする。
「…つー事は病死の可能性が高いな…」
「かもね、部屋にはAVや大人のオモチャが散乱してた…って報告を受けたけど…」
俺の呟きに賛同すると思い出したかのように呟く。
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