21
おお…そういや研究所に行く以外の道を歩くなんて久しぶりかもしれん。
いつだったか…なんか尾行に近い事をしてた時に通ったような記憶があるような無いような…
…あっれー?あの時はなんでこの方向に行ったんだっけ?
確か…なんか目的があったような気がするが…
うーむ…誰かと一緒に、人を追いかけてた…かも…
でもあれ?なんで人を追いかけてたんだ?
しかも誰かと一緒に誰かを追いかけるなんて、そんなん最近あったっけ?
……いっけね、勘違いだったかも。
…まあいっか、この方向に行った理由なんてどうでも良いし。
しばらくの間内心で思い出すように考えながら歩いた結果…
俺は考えるのが飽きてきてどうでも良くなったので思考を放棄して適当に歩き続ける。
「…ちょっと、君…」
「はい?」
適当に歩く事20分。
どこかに良いスーパーはないか…と探してると通行人の男性に話しかけられた。
「…もしかして、どこかで会った事ないか?」
「…え、もしかして…ソッチ系のナンパ?」
男性の質問に俺は若干後ずさり、ヒきながら聞き返す。
うわ、マジかよ…今は変装も何もしてない素のモブ顔なのに、こんな事ってあんの?
「あ、いや…違う違う…そう言うのじゃなくて…」
俺の反応に男性は困ったように否定して頭を掻く。
…ん?コイツの格好…良く見たらおかしくないか?
私服…では無いだろうけど、一般的な服装に近い…が、兵士の格好だ。
…この服装はどこかで見たような…
…うーむ、どこ系統の兵士だったっけ…
「人間違いだと思いますよ」
「…キーコード、顔も知らぬ…」
俺が適当に返して去ろうとすると男性が聞こえるか聞こえないかぐらいの声量でボソッと何かを言う。
「…なるほどな、リコード…見た者は…」
「やっぱりか!」
ギリ聞き取れた俺は歩みを止めて男性の正体に思い至り、振り向いて聞こえるか否かの声量でボソッと呟くように合言葉を返す。
するとその男性は嬉しそうに声を上げる。
「いやー、久しぶりだな…まさかまだ生きていたとは…」
「…話があるんなら場所、移動しない?」
こんな往来のある所じゃもし盗聴されてても気づくのが遅くなるぞ。
ソレに誰が聞き耳を立ててるかも分からないし。
「…ソレもそうだ、近くに提供された部屋がある…ソコでもいいか?」
「…まあこんな所よりは」
男性の提案に特に問題も無かったので賛成し後をついて行く事に。
「ココだ」
案内されたのはスーパーの上に住居があるようなアパート的な建物だった。
「ふーん…とりあえず飲み物買って良いか?」
「ああ、じゃあ3階に来てくれ」
「はいよ」
俺は一旦男性と別れてスーパーの中に入り当初の目的であったジュースを購入する。
そのあとに男性の指示通り階段を上がって3階に行くと…
なんとわざわざ廊下で待っていてくれたっていう。
…まあ確かに部屋がどこか分からないけどさ。
「…君がまだ生きていたとは…驚きだ」
「…盗聴の危険は?」
部屋に入り、ドアに鍵をかけて直ぐに男性が話しかけて来たが俺は先に確認をとった。
「無い、窓や壁にはそれなりの対策をしてある」
「盗撮の危険は?」
「ゼロだ、カーテンも特殊な物に変えてある…窓に貼り付けたモノは昼夜関係なく部屋の中の人の姿はぼやけてしか見えない仕様だ」
「そうか…なら大丈夫かもな」
男性の説明を聞きながらも一応部屋の中を自分の目で確認してから、飲み物その他の入った袋をテーブルの上に置く。
「…で?俺に何の用だ?」
「いや、懐かしかったから声をかけただけだ」
「…嘘だな」
超特殊部隊に所属っつーか在籍していた頃には一度も同僚に素顔など晒してないのに。
目の前のコイツも他のメンバーもどうだったかは知らんが俺は常に変装フェイスだ…今の素顔を知ってるワケがない。
「…やはりバレるか…だがまああながち嘘ではないんだがな…ただ本当の事を隠してただけだ」
「なぜ俺だと分かった?」
「勘だ」
「…ふん、どうせソレも嘘だろ?」
俺の質問にまた半分の嘘で返した男性に鼻で笑うようにして再び聞き返す。
「…嘘つき呼ばわりは止めてくれ、俺はただ事実を全部言っていないだけなんだ」
「ならばタヌキ呼ばわりしてやろうか?」
「…ふぅ、しょうがない…君を探すよう頼まれたんだ、特徴を聞かされたから比較的直ぐに分かった」
でも…君が俺と元同僚のドッペルゲンガーのメンバーだと気づいたのは本当に勘だったんだ…と男性は観念した感じを出しつつ、愉快そうに告げる。
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