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「…ゴホッ、ゴホ…何から何まで…本当にすまない…感謝する…」


「…いや、それよりも…聞きたい事がある…」


「…聞きたい、事…?」


「…この家を襲った、強盗について聞きたい…」



町長(仮)の感謝の言葉を適当に流して疑問に思ってた事を尋ねる。



「強盗の事を…?」


「…アレは、一週間前…」



女性が不思議そうに首を傾げると町長(仮)が話し始めた。



「急に男達が家を訪ね、私達の家系に代々伝わる家宝を譲って欲しいと頼んで来た…」



…おおっと、コレは俺がかすかに引っ掛かりを感じてたゲームのイベントでいう…



秘密結社絡みっていう感が強くなって来たぞ。



「…私は当然断った、見ず知らずの人に家宝をおいそれと渡す訳にはいかない…と」


「…ふむ…」


「それから3日後…今から4日前にその男達が黒い大きな鎧を纏った男を引き連れて再度訪ねてきた」



…あ、コレはもう確定じゃね?黒い大きな鎧って…黒騎士の偽物じゃん。



「そして、この家から家宝を奪って行ったのだ…」


「…お父様…」


「…その、家宝とは…?」



悔しそうに言う町長(仮)に女性が気遣うように声をかけるが俺はその雰囲気を無視して問う。



「コレぐらいの宝石のようなガラス玉みたいな物が6個ほど入った黒い箱だ」



町長(仮)は指で丸を作って宝石だかガラス玉だかの大きさを表す。



「…その箱の材質は、木…?」


「…いや、断熱材のような…不思議な材質だった気がする」



…はっはーん…なんとなくだが分かって来たぞー…



このおっさんがダルカサシ病になったのはおそらく家宝のせいだな。



…まあ家宝と何かの共鳴だか同調だかの電子波動を近くで浴びた…的な感じだと思うが。



実際見てないから予想でしか無いけども箱は絶縁体とかで出来てたんじゃね?



箱の外に、玉に帯電してるモノを漏らさないようにするために。



…う~ん…だとするとマズイぞ。



おそらく計画は最終段階のハズだ。



いつ何かしらのアクションが起きても不思議じゃない展開だろうよ。



くっそ…完全に後手に回ったって気がするんだけども。



「…そうか、ありがとう…」


「いや、こちらこそ…あの少年や少女にもお礼を言っておいてくれ」


「…分かった…」


「お気をつけて」



内心焦りつつも外面に出さずにキャラを演じ切って女性に見送られて豪邸を出る。



…早いとこ少年と合流しないと…なにかしらのイベントが起きた時に蚊帳の外になってしまう。



もしそのイベントが古代兵器に関わる事だったら最悪だし。



とりあえずギルドに行くも少年は居ない。



ので、俺が居ない時にイベントが起こってないよう祈りつつギルドの中で少年を待った。



「…あれ?ナナシさん戻ってたんだ」


「…どう、だった?」



待つ事約20分ぐらいで少年と女の子が戻って来る。



少年の反応を見る限り特に目新しいイベントは起きてないらしい。



…なんとか間に合ったか…ってアレ?よぉ考えたらコイツら今、二人しか居ないんだよな?



なんだ…それならイベントも起こらねぇか。



いくらなんでも戦闘メンバーが少な過ぎるし。



「…薬の調合は、なんとか成功した…」



俺はダブルで内心ホッとしながらも外面には出さず女の子の問いに答える。



「良かったー!コレで症状は抑えられるんだ」


「…抑えるだけ、だが…」


「あっ、ローン君…報告は受けてるよ、薬の材料収集と調合を行ったんだってね」



喜ぶ少年に俺が微妙な感じで返すと受付嬢が会話に参加してきた。

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